読書メモ

・「超簡単 お金の運用術
(山崎 元 :著、朝日新書 \700) : 2009.03.21

内容と感想:
 
<偽の金融リテラシー本に対する批判の書>
 良心的な金融リテラシー本。
 本業がある「普通」の投資家には資産運用に十分な時間を取れないもの。 運用は仕事でも趣味でもないのだ。 そのため著者は第一章でいきなり具体的な運用方法を述べ、自身「超簡単」という運用方法を紹介している。 その方法は「ほぼ効率的」、「損をしない」、「無難」な方法だという。 具体的な商品名や資金の配分比率まで書いている。 更に、できるだけリスクを取りたくないという人のために「リスク調整可能型」という方法も挙げている。
 資金はあっても本業が忙しくて運用している暇なんてない人、金融関係のセールスに無駄な時間やエネルギーをとられたくないという人向けである。 他人任せの運用で金融機関にカモにされるくらいなら、本書は一読の価値がある。 分かりやすくて、誰でも出来るくらいなのでつまらないかもしれない。知的ゲームとして運用を楽しみたい人向けではない。
 第一章で本書の結論を先に書いてしまったので、第二章は超簡単運用法の背景にある概念や考え方について述べている。 第三章では持ち家と賃貸の損得判断や、日本の財政赤字に絡むパニック論、ギャンブルとの付き合い方などの10のトピックについて解説していて、 これはこれで興味深い。

○印象的な言葉
・人的資本:自分の株価。将来獲得可能な収入を現在価値で評価。老後は人的資本は縮小する。
・ライアビリティ:負債。将来必要な支払い義務。高齢者は残りの人生に必要なお金は若い頃より小さい。取れるリスクも大きい。
・生命保険は人的資本の対するヘッジ。家に次ぐ二番目に大きな買い物。保険料に含まれる付加保険料(手数料に相当)は死亡保障中心のもので3〜4割、 医療保険では5割にもなる。ひどく損。
・リスクに対して十分な経済的備えがある限り、保険料を払うのは無駄。
・世の中にある多くの金融商品の大半は顧客にとって初めから検討に値しない不要なもの。逆に売り手にとっては利益率が高くて儲かるもの。
・アメリカ流の投資教育にも多くの間違いがある
・サブプライム問題から発生した金融危機は規模こそ大きいが、景気循環の一局面にすぎない。典型的なバブルの崩壊過程にすぎない。 現在、あるいはごく近い将来が株式による資産形成の絶好の時期。生涯最大級のチャンスに直面している可能性。
・2本のETFを貯金箱代わりに使う。TOPIX連動型EFT、海外の先進国の株価指数に連動するETF。適宜買い足し、まとまったお金が必要になったら解約する。
・自分が持っているものの価値は課題評価しがち
・「残念に思う」のは仕方がないが「後悔する」のは間違っている。過去に自分がもっていた情報と判断力では改善できなかったから。
・株式投資で長期的かつ平均的に期待できる利回りは市中金利プラス5%
・ETFを株価の動きを見ながら売り買いしてもうまくいかない
・REIT:多くは管理のされ方と手数料が不透明、値動きも激しい。特殊な不動産会社の株式と見ることもできる
・外為や商品取引はゼロサムゲーム。長期投資には不適当。
・個人向け国債:リスクがごく小さい。解約の条件は5年物より10年物のほうがよい。高齢の親や親戚に薦めるなら国債。
・MRF:普通預金より条件がよく、換金流動性にも優れた安全な商品。元本保証ではないが、元本保証のある対象に投資しているため安全。
・ETFの弱点:ファンドが償還されたり、上場廃止になる可能性があること
・高額療養費制度:健康保険に加入していれば一定額を超える医療費が発生しても、後から払い戻される。一時的な金策さえできるなら民間の医療保険に入る必要はない。 自分で運用するほうが合理的。
・健康保険は一元化すべき。大きな集団のほうが収支は安定するはず。
・国民年金の保険料の半分は国から税金で支払われるため概ね加入することが得になる。
・新築マンションの場合、買った瞬間に価値は3割減る。株式のように分散投資も利かない、取引手数料も高い。売りたいときに確実に売れるか分からない。 住宅をローンで買うと金利を含め結局、物件価格の1.5〜2倍を支払うことになる。将来の住宅バブルも期待しにくい。老朽化もする。
・会社と時間と活動が比較的自由な雇用契約を結び、他方で定年後に向けた活動を進める
・世の中に「絶対確実」というものはない。自分の思うに任せない物事が多々ある。通算で多く勝てばいい。
・お金と適切な距離感を取れる
・意思決定では結果ではなく「事前のベスト」に集中すべき、自分でコントロールできない部分については気にしても仕方がない

-目次-
第1章 超簡単お金の運用法の具体的な手順
第2章 超簡単お金の運用法の補足と納得のための説明
第3章 お金のあれこれ簡単レクチャー