読書メモ

・「トヨタ式 世界を制した問題解決力
(若松義人 :著、リュウ・ブックス アステ新書 \800) : 2009.01.22

内容と感想:
 
元トヨタマンのコンサルタント。著書も多い。 本書では「トヨタ式」(トヨタ生産方式)の「根幹の仕組みを、集中的に説いた」本である。
 トヨタは「知恵を重視」する。「知恵を出せる人の育成に心を砕いている」。 知恵を出させるために工夫し、「問題解決システムとして定着させてきた」という。 本書ではその問題解決のための知恵と、その知恵を出させるための知恵とも言える(メタ知恵と言ってもいい)考え方を 多くの事例を挙げて紹介している。トヨタ式の強さのわけが理解できることだろう。
 トヨタのようにどんなに組織が巨大化しても、トヨタ式の精神が浸透し、徹底されていれば、それほど強力なことはない。 形だけトヨタ式を導入し、真似しようとしても上手くいかないだろう。 トップを初め、社員全員が腹に落ちるまで理解し、実践していく必要がある。 そして自社の付加価値を高めるための知恵を出し、成果を出していかねば意味がない。

○印象的な言葉
・知恵を重視し、知恵を出せる人の育成に心を砕く。困らなければ知恵は出ない。知恵を出す技術。知恵の出力回路。
・考えさせるシステム:必死で、みんなで考える環境を作る。
・表面的な原因の裏に隠れた真因を探る
・「かんばん」は手段に過ぎない
・目に見えない差(改善)の積み重ねがやる気とやりがいを目に見えて高める
・負ける恐怖
・貧乏人の苦肉の策だからこそ強い
・ラクにやれる方法を追求する
・見るから「観る」、聞くから「訊く」。見えないものキャッチ、積極的に引き出す
・上司は分かっていてもヒントだけ出す。部下に気づかせる
・「すぐに」。トヨタ式に「あとで」はない。拙速におちいらないで「すぐやる」。今日のことは今日片付ける
・一人の天才より百人の普通人の束が強い。スタープレイヤーに依存せず、集団の強さを発揮。衆知を集める全員野球
・他の工程を助けることが自分を助けることになる
・率先力
・まず自分を変えることで周囲を変えていく
・ライバルよりトップと競う
・ミスをしたくても出来ない環境を作る。集中力が薄れ、不注意が生じることがある。考えながら、判断しながらやる作業を少なくする。 探さず、迷わず、判断せず。ミス防止を注意力に依存している限りは限界がある。
・問題がないのは問題が見えていないだけ
・やり切り宣言。強い意思表示
・セミナー:何が印象に残ったか。職場にすぐに適用できるものは何か。それを実際にやってみる。その結果を報告する
・「僕の改善が世界に広がる」。心が広々とする言葉
・人材を使いきれていない経営者や上司
・遠回りすると思わぬ出会いや発見がある
・豊かな経験も大きな障害になる
・相手に厳しいことを言ってこそ、お互いに成長できる
・時間がかかっても、遠回りでも、つぎはぎだらけでも、完成品をとにかく作り上げる
・技術の内製にこだわる:どうなるか分からないものを他社に任せられない。リスクを負わせられない。基幹技術を外部に委託するといざというときに困る。 中でやって得られるものを大切にする。自前主義。開発の失敗や苦労、工夫は中で。効率化は外に頼んで。
・頑張らなくてもいいように工夫する
・よその仕事に干渉しろ。いい意味で野次馬になれ
・作りやすい、売りやすい、運びやすい、修理しやすい
・ちょっとした不満、ストレス、言いたいことを我慢しないで提案にする
・人を抜くときは優秀な人を抜け。残された人から依存心が消える。「できる人財」への過度の依存
・成果主義はチームワークを解体する
・現状維持は後退を意味する
・一つのやり方に慣れ、現状に満足するとムダやムリは見えなくなる
・トップの背中は最大の社員教育の場
・書類はA3かA4用紙一枚。箇条書き、ビジュアルの活用。短く、分かりやすく、必要事項は漏れなく。読み手が短時間で目を通せ、概要が掴める。
・ただガムシャラにやっているだけでは、雇われて作業者になるだけ
・協力会社を発掘し、育て、共同でおおモノを作る。共に力を付け、共に売れてこそ相互繁栄。人を派遣し、資金面でもバックアップ。共に伸びていく共生型。

-目次-
序章 小さな改善がなぜ世界をリードしたのか
1章 トヨタ式は「考える力」をつける世界標準
2章 やってみることは思考の一部である
3章 トヨタ式の強さは「知恵がチームを組む」強さ
4章 夢は見える化せよ、失敗は数値化せよ
終章 「まだ」意識がトヨタ式を「また」進化させる