読書メモ

・「ビジネスマンのための「数字力」養成講座
(小宮 一慶 :著、ディスカヴァー携書 \1,200) : 2009.07.11

内容と感想:
 
ビジネスマンにとっての「数字力」を把握力、具体化力、目標達成力の3つに定義している。 これらは相互に関連している。数字を使って「具体化」することで物事を把握しやすくなる。 数値化し定量化し、分析することで課題を明らかにし、具体的な目標に落とし込むことが可能になる。 目標達成までのプロセスを逆算することで「目標達成力」が上がることになるのである。 数値で具体化することで説得力も高まり、新たな発想も生まれる。
 著者は会計が専門だが、ビジネスマンの実情を見て、会計や金融以前に「数字」に対する感覚・リテラシー、見方・扱い方の基本を身に付けることが重要、 と考え、本書を書いた。 「数字力」は「物事を論理的に推論し、把握していくためのツールであると同時に、自分の夢やゴールを達成するためのツールともなる」から 生きる力の一つとして、またビジネスパーソンには必須のスキルと言える。 数字力が身に付くと世の中の見え方が変わってくるのだという。
 数字力を上げるための3つのステップを、数字の把握、数字と数字の関連付け、数字を作る、としている。 これは最初の3つの力の説明にも重なる。把握した数字の相関関係などを知ることが発想力やひらめきにつながり、 それに基づき目標を数字で設定していくのだ。
 第2章では数字の見方の「七つの基本」を、 第3章では数字を見誤る「六つの数字の罠」を、 第4章では数字力が高める「五つの習慣」と実践訓練法について解説している。 難解な数式などはなく、具体例を挙げて分かりやすく書かれていて、すぐに役立つものばかりである。

○印象的な言葉
・ビッグフィギュア(大きな数字)
・日本のGDPは約500兆円。GDPは付加価値(売り上げと仕入れの差額)の総額。 この「付加価値」には税金や設備投資、余剰金、株主への配当、人件費などが含まれる。 付加価値に占める人件費の割合が労働分配率。GDPが上がらないと給料も上がらない。
・名目GDPは実際の金額(実額)。実質GDPは実額を2000年の貨幣価値で見た値。デフレ・インフレを調整した値。 2000年からの7年間に9%のデフレが起きていた。給料は上がっていなくても、実質的には9%上がった。
・日本の労働分配率は6割。就業者数約6,000万人。平均給与は約450万円。一人当たりの付加価値は約830万円。社員数からだいたいの売上高が分かる。 中堅企業で一人当たり付加価値は1,000万円、大企業で1,500〜2,000万円。中小企業なら600〜700万円ないと厳しい。
・付加価値率=付加価値÷売上高。日本の平均は3割
・推論する道筋の付け方が分かること
・年金記録問題。件数としては全体の0.2%くらいではないか。その程度で世の中が振り回されているのはおかしい。 それよりも年金制度そのものに対する本格的な議論をすべき。疑義のある人の年金はある程度の確証が取れれば払えばよい。
・大枠を間違えなければ大怪我はしない
・大きな数字は上から2桁だけ知れば十分
・できる経営者:細かいことにも気配りしながら、大枠は絶対に外さない
・最初の仮説が適切でないと正しい結論は得られない
・多くの経営者は将来を慎重に見ている。手堅く、慎重なタイプが多い
・夕刊は1版から始まり、朝刊は11版から始まる
・景気の波:建設業の業績は他業種より1、2期遅れる
・お金を追うな、仕事を追え
・よい仕事ができていないから売り上げが落ちる。売り上げが上がれば、それだけ社会に貢献していること

-目次-
第1章 「数字力」で世の中の見え方が変わる!
第2章 数字の見方 七つの基本
第3章 数字力を阻害する六つの罠
第4章 数字力が高まる五つの習慣