読書メモ

・「サブプライム問題の正しい考え方
(倉橋 透、小林 正宏 :著、中公新書 \740) : 2009.05.31

内容と感想:
 
2008年4月に出た本。 サブプライム問題をテーマにした本は既に数多いが、中公新書らしい、やや硬めの論調である。 サブプライム問題の経緯や、それによる世界金融危機、実体経済への影響など、類書で既に語り尽くされた感はある。
 私には第4章では日本の住宅ローンについて論じていて興味深かった。 日本ではサブプライムに似た変動金利が蔓延していることを挙げ、 消費者教育が徹底されていない、と指摘している。 アメリカ人でさえ普通の世帯は全期間固定金利のローンを組んでいるという。 日本でも世界同時不況の余波でサブプライム問題と 似たような状況に陥る人が多く出ないだろうか?

○印象的な言葉
・資本主義は時として暴走する
・必需的な財が投機的取引によってその価格を左右されると迷惑する人が大勢出る
・FICO:アメリカの個人の信用力を数値化するスコアリング・モデル
・戦後一度も全米で住宅価格が下落したことがなかった。住宅神話
・アメリカの住宅価格は20年間で3倍になったものの、名目GDPも3倍であり、必ずしも全米でバブルだったわけではない
・カリフォルニア、フロリダではヒスパニック移民の流入で人口増加が著しく、住宅への潜在的需要が根強い
・日本では土地の価格が高いが、アメリカでは建物のほうに価値がある。住宅価格に占める建物の比率は8割。 90年代後半からはその比率は低下傾向。
・アメリカ住宅市場は中古住宅の流通市場がメイン
・格付け:債務不履行となる確立を表わす信用リスクの指標。流動性リスクや価格変動リスクは対象にしていない
・ファニーメイ、フレディマックが破綻した場合のアメリカ経済へのインパクトはサブプライムの比ではない。2社の発行したMBS残高は4兆ドル。 アメリカの金融システムの根幹を形成するインフラ。
・アメリカでは持ち家率が68.9%(06年)。価格上昇期待から投機目的で購入された住宅も多かった
・ドル資産を抱える多くの政府系投資ファンド:ドル暴落で損失を蒙った。アメリカ自体が「巨大すぎて潰せない」
・日本はエネルギー、穀物、食の安全など外国に多くを頼る。経済社会が外的なショックを受けやすい脆弱な構造

-目次-
第1章 サブプライム問題とその余波
第2章 焦げ付いたサブプライムローン
第3章 国際金融市場への波及
第4章 日本の住宅金融システムへの示唆
第5章 今後の見通しと日本の課題