読書メモ
・「振動力発電のすべて」
(速水 浩平 :著、日本実業出版社 \1,400) : 2009.03.09
内容と感想:
著者はタイトルにある「振動力発電」システムを開発、実現し、本格的な実用化に向けて実証実験を行なっている。
大学生時代からそれをテーマに研究を始め、起業までしてしまった。
私が振動力発電の存在を初めて知ったのはTVの報道番組で、東京駅の改札で行なった「発電床」の実証実験を取り上げていたときであった(2008年の初めあたり)。
私自身もかつて東京で通勤していた頃に、通勤ラッシュに揉まれながら、これだけ多くの人のエネルギーを発電に活かせないものかと夢想したものだ。
そのときは残念ながらそれを現実化しようなどと真剣に考えることはなかった。
本書は振動力発電および音力発電について原理や仕組み、用途、その可能性について解説している。実際、私は可能性を強く感じた。
メリットは火力発電や原子力発電のようにCO2や放射性物質などの廃棄物を出さないこと、人を不快にさせる振動や騒音を電力に変えることで、
それらを小さくすることができること、などである。
本書では開発秘話も語られていて、若い起業を目指す人にも希望を与えるだろう
気になるのは耐久性。例えば発電床は多くの人がその上を歩くことになるから壊れやすくないか心配だ。
応用としては昇降が多い駅などの階段や、体育館の床、通勤バス、船などに設置するのもよいかも知れない。
また公園の遊具などに取り入れて、子供がそこで運動することで発電した電気によって光らせたり音が出るようにしたら子供も喜ぶかもしれない。
空港のジェット機の爆音で音力発電というのもありだろう。振動したり揺れたりするものならアイデア次第で何でも応用可能だ。
まさに夢の発電システムである。
個人的には振動力発電は微弱な電力でも動作する機器に向いていると考える。
リモコンを押す指の力(振動)を利用して発電してリモコンの電源にするという開発も製品化が視野に入っているという。
また、持ち運び可能な形態にできればどこでも発電できることになる。新しいライフスタイルを提案できるかも知れない。
どこでも発電できるのなら大地震などの非常時に停電により通常電源が使えなくなっても安心だ。
「地産地消」のため送電設備が不要なのも良い。大電力の発電には向かず、安定供給にも不安はあるが、適材適所で使えば、既存の配電システムや
電池などの一部を置き換えたり、補完したりできるだろう。
国はクリーンエネルギー開発を支援すると言っているから、振動力発電の普及も進む可能性がある。期待したい。
○印象的な言葉
・振力電池
・好きなことを、何でも自由にやらせてくれる研究室、いいと思ったことをいいと評価してくれる雰囲気
・圧電素子:別名ピエゾ素子。振動や力が加わると歪みを生じて電圧に変換する。圧電効果。電圧をかけると収縮するのは逆圧電効果。
高い電圧を得られるが電流は少ない。材料にはロシエル塩、チタン酸バリウム、水晶。振動を送ると交流が発生。
・波の振動を利用した波力発電
・振り子型振動力発電機:高速道路に設置
・音力発電:可聴音であれば発電可能。超音波では発電しにくい。
・泥棒がガラスを割って侵入しようとしたら、その振動で発電して侵入を通知する
・家中に敷き詰めた発電床が一斉に発電したら地震と推測。地震センサーにもなる
・電子ペーパー型ポスターとの組み合わせ:電子ペーパーは画面を切り替えるときだけしか電気を使わない。人が歩くだけで広告が切り替わる
・降水センサーとしても使える→振動すれば何でもセンサーになる
・防音壁に音力発電装置を埋め込めば更に防音・消音効果を発揮
・高層ビルはビル風で常に揺れている
・橋に振動力発電機を設置することは橋の振動を吸収することにもなり、橋の耐久性を高める
・鉄筋コンクリートの鉄が錆びるのを防ぐためにわずかな電気を流す。錆びとはマイナスの電気が奪われること
・振動力発電で得られた電力波形をモニタリングすることで機械などの異常を見分ける
・全部やったか?全部試してみたか?残る可能性は全くないのか?
・ビジネスアイデアコンテスト、ビジネスプランコンテスト。勝ち負けよりも、それによる「教育」効果
・本当に新しくて良いものは市場調査では判断できない。全く新しいコンセプトを持つ商品はユーザは与えられて初めてその価値に気付く。
・自分の周りで10人中7〜8人が良いと思ったものはたいてい良いもの
・起業資金は補助金、助成金に頼らないほうがよい
・キャパシタ(コンデンサ)の充電効率も向上。小型で大容量もできてきた
・送電ロスは発電電力の5%程度。熱として空気中に逃げる
・火力発電で得られる熱の多くが大気中や冷却水に出て行き、熱量の25%しか電気に変換されていない
-目次-
1章 究極のエコ・エネルギー「振動力発電」に成功!
2章 「騒音」や「振動」を電力に! 日本発のエネルギー革命
3章 はじめからうまくいく研究などなかった
4章 研究開発からビジネスへ いざ挑戦!
5章 「音力発電」「振動力発電」で脱石油が実現する
「エネルギー革命」宣言
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