読書メモ

・「アメリカ経済終わりの始まり ─脱ペーパーマネー経済時代の超資産運用論
(松藤 民輔 :著、講談社 \1,600) : 2009.08.02

内容と感想:
 
2006年末に出た本。サブプライム問題が明らかになる前で、サブプライムという単語も出てこないが、 世界的な不動産バブルが崩壊すること、それに伴って株が暴落することを予見している。
 「はじめに」には本書では、投資において、誰もが入手できる情報から先を読む方法を披露したいと述べている。 自称「非常識投資家」という著者の持論や情報分析が書かれている。 更には投資で勝つために必要なこととして以下を挙げている。「科学的かつ客観的なデータや法則を透視する」、 「見識や経験に裏打ちされた判断力」、「夢と勇気とサム・マネー」。
 本書には「GSR(Gold Silver Ratio)」や「ビッグピクチャー」などといった耳慣れない指標・キーワードが登場する。 第4章ではそれらの指標の有効性と見方を説明している。 第5章ではタイプ別の資産運用法にも触れている。
 テポドンはアメリカが日本にミサイル防衛システムを買わせるためとか、イラク戦争はドル防衛のためとか、 「9.11」はデリバティブ投資の「飛ばし」のためだとか、驚くべき見方をしている。 今後の日本の情勢や世界の情勢を見通すのに参考になった。

○印象的な言葉
・投資とは透視。未来を透視する。3〜5年後の世界と日本経済を見通す。
・2007年から3年間は団塊世代の退職金80兆円の争奪戦
・「後付け理論」が得意なエコノミストや経済評論家、金融ジャーナリスト
・コンセプトや複雑系で動いている世界の捉え方
・世界金融を動かす「ファンド」
・格付けの高い国ほど金利は低い。金利0%とは「円が世界の基軸通貨になった」こと。ゼロ金利でも円を買いたいと思われている。 円には実力があり、暴落することはない。日本は借りたものは必ず返す国(信用がある)
・アメリカが戦争できるのはジャパンマネーのおかげ。日本が米国債購入をストップしたとき、平和が訪れる
 ⇒ストップできるのは平和になったとき。無闇にストップしても世界が不安定になるだけ
・BRICsは瓦礫の山
・すべての投資商品は連動している
・中国崩壊の脅威
・「ものづくり精神」が失われた90年代にアメリカは滅んだ。製造業は二流、三流。頼みの金融業が吹っ飛んだら何も残らない
・世界が豊かになればなるほど日本製品は売れる
・原油200ドルでも生き残れる日本。省エネ、省資源パワーに優れる
・テポドン発射はアメリカが日本にミサイル防衛システムを買わせるため。主演・北朝鮮、演出・中国、脚本・アメリカ。 核兵器のない北朝鮮など誰からも見向きもされない。永遠に核兵器を開発し続けなければいけない。いつかは崩壊する運命。
・イラク戦争はドル防衛のため。40兆円の投資で1,100兆円(原油利権)を獲得。ビジネスとしては大成功。イラクの原油は硫黄分が少なく良質。 当時のフセイン大統領は原油決済通貨をドルからユーロに切り替え、イランやインドネシアも追随しようとした。ドル崩壊の危機。
・「9.11」はデリバティブ投資の「飛ばし」のため?崩壊したワールドトレードセンターには米国債の取引会社が入っていた。 コンピュータシステムも吹っ飛び、米国債の残高や持ち高が消えた。
・永久債発行で日本の財政問題は片付く
・GSRが大きく変動するとき、暴落が起きる。50を割り込むか、100に近づくとき
・商品市況指数CRB
・金鉱株トップ15のHUI
・ブリッシュ・コンセンサス:アメリカで3万社から発行される投資情報ニュースレターの全紙面がブル(強気)のとき。その翌年、米国株は暴落する。
・バルチック指数BDIはNYダウの先行指標
・不動産始業HGX
・フィデリティ投信の巨大資金(60兆円。日本の国家予算並)に比べればロスチャイルド銀行など小さい。フィデリティの動きは要チェック
・多額の資金の受け皿は日本にしかない。フィデリティは資金の半分を日本に投資。
・ある国への投資では、その国の人間の生き様、民族の生き様である歴史を学ぶ必要がある
・中国株よりも中国へ物資を供給する銘柄が買い
・アメリカは急速に原子力発電所建設にまい進。既存の多くが老朽化。原発設備の製作能力もない。
・鉱山業はインフレにもデフレにも耐えられる
・菱刈金山は世界最高品位の金山
・株式を長年所有し、配当金で生活するのが投資の王道
・団塊世代の退場で、彼らを大量雇用していた企業(重厚長大、自動車、電機、流通)の固定費は激減する。財務体質は急速に改善され、株価は上がる
・日本の国債が6〜7%になったら長期債にシフト
・訓練はバカにならない。勘も磨けば光る

-目次-
第1章 FRBが金利を下げるとき、株は暴落する
第2章 脱・ゼロ金利戦略 ―主役はドルから「円」に!
第3章 トヨタがGMを吸収、それは日本型システムがアメリカを凌駕する日
第4章 投資の法則「ビッグピクチャー」を読み解く!
第5章 二極化時代を生き抜く「タイプ別資産運用法」
終章 なにを見れば「次」がわかるのか? ―市場が一気に反転する瞬間!