読書メモ
・「お金を知る技術 殖やす技術 〜「貯蓄から投資」にだまされるな」
(小宮 一慶 :著、朝日新書 \720) : 2009.03.28
内容と感想:
金融リテラシー本。
本書は人生を豊かに暮らすための金融の活用法について書かれている。
具体的には金融の知識を身に付け、状況に応じた金融商品の活用方法を知ってもらうことを目的としている。
それは豊かに暮らすために必要な「技術」と著者は捉えている。
前半はお金の知識。
第5章では資金過不足表、一生のキャッシュフロー、個人版バランスシート、資産内訳表などを自分で作って、
一生を通して稼ぐお金や出て行くお金を把握する方法を紹介していて実用的である。
老後にもらえる年金の計算方法についても触れている。
ライフプランを描くために役立つだろう。
後半は投資の知識を解説。国債や株、投信などの金融商品について特徴を述べている。
特定の商品購入に誘導するような書き方はされていない。
サブタイトルの「貯蓄から投資」にだまされるな、というのは、
それは「無理やりシフトするものでもなく、経済環境などの外部要因や価値観をベースに、自然に、かつ合理的にシフトする」かしないかを
判断するべきもの、というところから来ている。
しっかりとした知識を得た上で、投資するかしないかは自分で判断することだ。
強欲な金融機関にカモにされて投資資金を減らさないようにしたいものだ。
○印象的な言葉
・ダウンサイドリスク:最大限の損失
・住宅を貯蓄と考える。住宅ローンを返すことを、強制的に貯蓄をさせられていると考える。
・米国では30世帯に1つ、日本では50世帯に1つは金融資産が1億円を超える富裕層。
・金融は道具に過ぎない。うまく使って幸せを増進させればいい
・資産運用の配分の見直し(リバランス)は景気の変わり目に行なう
・人によって最適なポートフォリオは違う(年齢、家族構成、収入や必要資金など状況によって違う)
・一時期、損を抱えても、時間的余裕があれば失敗を取り戻す機会もある
・「米国人は株式での運用比率が高い」のはごく一部の超富裕層がその大半を持っているから(上位1%の人が5割を保有)
→平均値にごまかされるな
・日本人が金融資産に対する預貯金の比率が高いのは合理的な判断の結果。
・「攻めるお金」として株式投資は最も効率の良い方法
・投資理論の多くは過去の経験則からくる後付の理論。売る側に都合よく展開されている理論が横行。
・値動きが連動しない(相関が小さい)金融商品を組み合わせてリスク分散
・リスク:リターンのばらつき。標準偏差のこと。一般的には「1標準偏差=1σ」。正規分布の場合、1σ以内に入る確率は約68%。
・GDP:国内で作られた「付加価値」の合計。売上高から仕入額を引いた数字(企業で新たに作り出された価値)。
付加価値から支払われるかなりの部分が給与。GDPが伸びないことは給料が上がらないことを意味する。
・中央銀行は短期金利はコントロールできても長期金利はコントロールできない
・賃貸住宅の場合、貸す側は長くても20年で元が取れるように計算している
・401k:短期間でリバランスさせるとそれだけで年率3%程度の手数料を取られることになる
・バフェット:短期投資をしてくれるプロのファンドマネージャのおかげで儲かる
・投信は長期間で実績のあるものを選ぶべき。過去3年間くらいの実績を見る。人気のある投信は資産総額が増えているはず。
・シャープレシオ:数字が大きいほどリスクに比してリターンが大きい、良い商品。
・EBITDA:会社が生み出すキャッシュフロー。実際にその企業が持っている価値を表わす。
・営業キャッシュフローが安定的にプラスで、高い会社は本業が強い会社
・日本の中小企業のファイナンスの大半を銀行が担っている
・金利上昇は金利収入の増加→個人消費を刺激。年金運用利回り上昇→年金財政の健全化、少子高齢化でより負担が増える若い世代の負担軽減につながる。
ダメ企業の淘汰も進む。
-目次-
金融が分かれば幸せになれる
第1部 お金を知る技術
経済の大きな流れをつかむ
「攻めるお金」と「守るお金」
「日本人は株嫌い」のウソ
損得は「時間軸」で見る
必要なお金をざっくり計算してみよう
第2部 お金を殖やす技術
「投資の達人」への3ステップ
まず「金利」を理解して味方につけよう
「守るお金」はこうして殖やす〜預金・国債…
良い投資信託、悪い投資信託の見分け方
株式は「気に入った銘柄」を「長期保有」で
「低金利」が日本をダメにする
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