読書メモ
・「王貞治に学ぶ日本人の生き方」
(齋藤孝 :著、生活人新書 \660) : 2009.12.27
内容と感想:
「王さん」といえば王貞治。最近では野球のWBCの監督(2006年)としてご存知の人も多いことだろう。
知ってのとおり選手、あるいは指導者として知らぬ者はいないはず。真のプロとして偉大なロールモデルである。
その王さんが現役を引退した1980年は私は中学生だった。自分では野球こそやらなかったが、
地方のTVの野球中継と言えば巨人戦だったから、毎晩のように見ていた気がする。
王さんは名前から分かるように純粋な日本人ではないが、日本人以上に日本人的だと著者は捉えているのであろう。
本書は現役時代のみならず、指導者へ転身してからの王さんの人生から学べることが多いと考えて書かれた。
そこからはサラリーマンなら平社員から管理者までが、普遍的な価値を見出すことができるだろう。
著者は王さんを「心技体を最高度に結実させている人物」と絶賛する。
現役時代の彼は「武士」を感じさせた。刀をバットに持ち替えただけの侍。著者はそこに宮本武蔵のような修行者・求道者の姿も重ねて見ている。
また、そのプロ意識に「職人気質」を感じてもいる。
王さん本人は自分のことを「技術屋」と称している。ホームランを量産していた頃は打てばホームランかというくらい、
まるで精密機械のようであった。そこまでバット技術を極め続けたということだ。
イチローじゃなくても誰もが尊敬できる人格者でもある。だからこそ選手たちは王監督についていった。
第七章で監督退任会見での言葉を紹介している。
それは68歳にもなりながらもまだ「心をときめかせて」やってこれた、という趣旨のもの。
そんな年齢になっても「ときめき」を持ちながら生きていけたら幸せな人生だろうなと思った。
いくつになっても常に好奇心を失わず、課題を求め、それに挑戦していく、それが続けていければ生きていける。そう感じた。
○印象的な言葉
・知情意体:知性、感情、意志、身体
・くじけずに生きていけばなんとかなる
・なぜ誰も一本足打法を継承しないのか
・気力の充実。自分自身を支えるのは気力
・日々のコンディションつくりがプロフェッショナル
・一流の職人:人間性も優れると見なされた。卑しい真似はしない、嘘はつかない、いいものを作り続ける
・職を辞する基準をもっておく。緊張感を与えてくれる
・気持ちが胸にあると気が動き、上体が揺れ動く。胸がどきどきするのは気が胸に集まっているため。
・思い定めた仕事があれば、わずらわしさや苦しさを含めてやり遂げることに喜びを見出す
・バットを振り続けているときは、自分に対する不信や不安が消える
・プロはミスしちゃいけない。人間だからミスはするものと思っていると絶対にミスをする
・集中力を増すために、あえて悔しがる、怒る
・普通の人と同じことをやっていたら(より高いレベルへ)到達できない。野心、野望
・攻めの気持ちでリラックス
・課題が見つかるとステップアップのチャンス。その解決に向けて努力すればいい
・選手から指導者へ。チームを鼓舞し、勝利に導くことに喜びを感じる。意識の転換が必要
・野球監督は参謀ではなく突撃隊長。安全なところで命令するのではなく、矢面に立って戦ってこそリーダー
・己の腕一本で誰でも納得させる
・若くて成長過程にある場合、自分のことだけ考えたほうが伸びる。いい気分でプレーさせて、調子に乗る感覚を大事にする。チーム全体のことはリーダーが考える。
・戦う集団が戦うことに集中できなければ、持てる力は出ない
・チームの運気や勢いを大事にする
・いい年をした男たちが泣いたり笑ったりするプロ野球の世界。一般社会にはないテンション
・勝ち負けの結果がはっきり現れるから心が動かされる
・見ている人がすごいな、自分には出来ないな、というプレーをするのがプロ。それを求めて精進するのがプロ
・男は切れ味とインパクト。ずば抜けたもの、衝撃を与える
<感想>
・世界の王←→日本の長嶋
-目次-
プロローグ 日本人を応援し続けた王貞治
第1部 王貞治の「軌跡」に学ぶ
王貞治とはどんな選手だったのか
「型」としての一本足打法
「技術屋」の矜恃
そして福岡へ
第2部 王貞治の「言葉」に学ぶ
プロフェッショナルとは何か
指導者はいかにあるべきか
人として、男として、どう生きるべきか
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