読書メモ
・「無法バブルマネー終わりの始まり ─「金融大転換」時代を生き抜く実践経済学」
(松藤 民輔 :著、講談社 \1,500) : 2009.08.23
内容と感想:
サブプライム危機により金融機関の巨大損失が次から次へと明らかになり、
メリルリンチやシティグループのCEOたちが辞任していく2007年末ごろに書かれた本。
「xx終わりの始まり」というタイトルの3冊目。
内容は前2作と同じ論調であるが、サブプライム危機など日々変化する世界経済情勢などの
新たな情報を盛り込みながら、著者独自の視点での分析が語られている。
個人的にはこの先、世界はいったいどうなるのか不安が募るばかりで、いろんな人の本で様々な見方を知ろうとしているところ。
本書で得られた新たな情報としてはBRICsの一角を占める中国やロシアの動向。
金鉱山経営者の著者としては、金融不安の拡大でますます金の価値が上がると威勢がよい。
○印象的な言葉
・ロシアのカントリーリスクは世界一
・日本企業の資源ビジネス参入時がロシアのピーク
・サブプライムローンの金利が本格的に上がるのはこれから
・2000年から2006年にかけて欧州の住宅価格の平均上昇率はアメリカを上回る年10%
・東京マーケットの復活は確実
・日本のバブルの時、プロ以外の一般市民は投機に手を出さなかった。ゼロ金利時代を通じて更に資産を増やした。
・中国:世界最大の山峡ダム、世界初の商業用リニアモーターカー
・1m当たり80Kgの重量に耐えられる80キロレールは日本の新日鉄にしか作れない。敵対的買収に備えて自社株買いなどで市場の株数を減らしている
・自動車用鋼板は特殊なため中国は生産できず、日本と韓国から輸入。自動車生産用ロボットや機械も日本に依存
・中国政府は民間企業には外貨を持たせない。中央銀行が強制的に買い取っている
・中国の三農問題:低生産性、荒廃、貧困
・中国のジニ係数は0.6(0.4を超えると社会不安を招く)
・北朝鮮との国交が樹立されれば、いずれ世界の生産拠点になる可能性がある
・中国産の食品が危ないことは中国人民が一番よく知っている
・ミャンマーの原油と天然ガスが魅力の中国。経済制裁下の軍事政権を支援
・中国人民解放軍の軍人のリストラにより困窮する退役軍人が続出
・ロシア株式市場の時価総額の6割をロシア政府が握る
・プーチンの狙いはロシアの復権。西側諸国に奪われ続けた権益の原状回復
・EUは天然ガスの4割をロシアに依存
・原子力発電所の建設、技術、操業、保守、点検、管理に強いのは日本の三菱重工、日立、東芝
・東芝はPWRとBWRの両タイプの原発を建設できる総合プラントメーカーに変身。ウラン採掘もカザフスタンと提携
・金ETF:流動性に優れ、手数料も株式取引より安い。東証版金ETFは金現物と交換可能
-目次-
第1章 サブプライム・ショックの本当の恐怖
第2章 中国の不都合な真実
第3章 ロシア資源戦略の「限界」
第4章 これから一〇年は、金と金鉱株の時代
第5章 五〇〇年目の「黄金の国ジパング」
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