読書メモ

・「絵ときでわかるモータ技術
(橋 寛 :監修、オーム社 \2,500) : 2009.04.20

内容と感想:
 
大型モータから小型モータまで、その動作原理や構造、特性、制御方法、使い方などを 図解を用いてやさしく説明した本。 取り上げるモータは直流、交流を問わず、またリニアモータやサーボモータ、ステッピングモータ、同期モータなど多岐に渡る。 そのためも各モータの説明はポイントだけに絞られており、詳細までは踏み込んでいない。 広く浅くモータ全般を理解したいのであれば本書で十分だろう。
 各章のおわりには章の「まとめ」もあって、ここだけを読んでも各モータの特徴や違いが理解できる。 最後の10章では実際にそれらのモータがどこで使用されているかの事例を挙げていて、 今の生活があらゆるモータで支えられていることを知ることができる。 家電や自動車など、身近なものにそれぞれの特徴を活かしたモータが使われているのが分かる。

○ポイント
・トルク:回転力。回転が遅くても大きなトルクが必要だったり、トルクが小さくとも速い回転が必要とする場合、DCモータが適す(電車など)。 新幹線ではACモータの一種、誘導モータが使われる。
・モータの効率:直流がよく、交流はよくない
・直流モータ:整流子とブラシがあるため寿命が短く、メンテナンスが必要。速度制御に優れる
・誘導(交流)モータ:堅牢で構造が簡単、長寿命で安価。インバータによる可変速が容易。始動トルクが小さいため、小容量モータに使われる
・サイリスタ:一方向に電流を流す。これを逆並列接続し、双方向に電流を流すようにしたものが双方向サイリスタ
・リニアモータ:直線運動を得られる。理想的なダイレクトドライブ(直接駆動)。機械機構がないため経年変化がなく、スムーズで広範囲の加減速が可能
・コアレスモータ:電機子に鉄心を使用せず、コイルのみにして慣性を小さくした
・ブラシレスモータ:DCモータのブラシと整流子を電子的に置き換えた。磨耗や火花などによるノイズがない。ホール効果を用いる。 制御方式にはPLL制御やF/V(周波数/電圧)制御、サーボ制御(応答に優れるが複雑、高価)などがある。
・近年、電子制御技術の進歩によりACサーボモータが多く使われるようになってきた
・ホール素子:磁界(磁束)を検出。これによりモータのロータの位置や速度を検出できる
・PLL制御:Phase(位相)をLock(同期)させるLoop(フィードバック)による制御。位相比較器により基準周波数に同期する。モータの回転数の安定度では最も優れる
・インバータ:直流を交流に変換(逆変換)。電圧は同じでも周波数を変えることで誘導モータの回転数を変えられる。交流を直流に変換する回路は整流回路。
・サーボモータ:フィードバック制御により、位置や負荷、速度などの急激な変化に迅速に対応。DCサーボモータは電流対トルク特性の直線性がよく、制御性に優れる。
・PAM制御:パルス振幅制御。低速域での低電圧コントロールの安定性に優れる。回路が複雑なため高価
・ステッピングモータ:パルス数により決められた角度まで高精度で回転できる。ハイブリッド形が主流で、高精度。精密な位置決めが可能

-目次-
1章 モータの基礎
2章 直流モータ
3章 誘導モータ
4章 同期モータ
5章 リニアモータ
6章 小形直流モータ
7章 サーボモータ
8章 ステッピングモータ
9章 小形交流モータ
10章 モータの応用例