読書メモ

・「世界一身近な世界経済入門
(門倉貴史 :著、幻冬舎新書 \720) : 2009.04.18

内容と感想:
 
グローバル化の進展により日本経済もその影響を大きく受けるようになってきている。 アメリカ発のサブプライム問題が日本を直撃しているように、世界経済のつながりが緊密になってきていることは 多くの人が感じていることであろう。
 本書ではコーヒーや魚、オレンジジュースなどの身近な商品を例として取り上げ、それらの値上げの要因などを明らかにしている。 その「背景にある新興国の台頭や世界経済の大きな波」を感じ取れるはずだ。 また、新興国の経済発展により地球上の資源が枯渇する恐れが高まっていることにも触れている。
 現在、世界同時不況と言われるが、長期的には世界的に資源価格は今後も上がり続けると見られている 「資源の分布をみると、そのほとんどが新興国に集中している」という。 それらの国々は資源を輸出することで高い経済成長を達成している。 BRICsを初めとする近年の新興国の台頭には「安価な人件費」に加えて、豊富な資源が武器になっている。 それにより「もともと巨大な人口規模・経済規模を持っていた国が一気に離陸」することを可能にしたと説明する。
 本書を読めばより世界経済が身近になり、興味が高まるだろう。

○印象的な言葉
・水産資源の囲い込み。ロシアは生きたカニを全面禁輸にした。ロシアでもカニの消費量が急増。乱獲により漁獲量も減少、密漁も目立つ。
・日本のマグロ消費量は世界の4割を占める
・日本で消費するウナギの8割を輸入に頼る。中国からの輸入が1位。ヨーロッパウナギの稚魚が欧州から中国に輸出され、養殖・加工される。
・上海ガニ:江蘇省昆山市の陽澄湖で養殖されたカニを指す。販売されているうちの8割は産地を偽ったニセモノ。メスの値段のほうが高い。
・日本はマダコのほとんどをモロッコから輸入。捕獲規制により輸入量が激減、価格は高騰。
・燃料電池に不可欠なプラチナ
・水不足時代到来
・アマゾンに眠る膨大は「遺伝資源」。先住民族インディオが先祖代々受け継ぐ土着の医療法。新薬製造に役立つ
・アマゾンの熱帯雨林は急速に消失している。大豆など穀物栽培に転換している
・ケフィア:ロシア・コーカサス地方のヨーグルト
・お菓子は嗜好品のため、値上げすると客離れを招きやすい
・インド、中国でパン食化が進む
・バイオ燃料の人気で小麦からサトウキビやトウモロコシに転作が進む
・コーヒー豆のアラビカ種:ブラジルの高原地帯の気候が適する。世界生産量の約7割を占める。ブラジルのコーヒー農園を支えてきたのは日本の移民。
・紅茶の生産量の1位はインド。ダージリンは世界3大銘茶のひとつ。最初に英国に輸入されたのは緑茶だった。東インド会社を通じてアッサム地方で紅茶栽培が始まった。 インドでは紅茶を「チャイ」と呼ぶ。
・世界的に緑茶はマイナー
・トルココーヒー:独特の製法。非常に濃いコーヒー。眠気覚まし、酔い覚ましとして飲む
・中国でも元々、生魚を食べる習慣はなかった。
・ドバイ:石油産業依存からの脱却に成功。宗教に対して寛容。中東の物流拠点、金融拠点としてのプレゼンスを高めている
・乳香:オマーン南部に生育する木。樹液から香水が取れる
・ナイジェリア:250以上の他民族国家。もともと民族紛争が絶えない
・ベネズエラ:2006年にメルコスールに加盟。チャベス大統領は反米路線の強化を訴えている。原油の代替として注目されるオイルサンド。 オイルマネーの一部を近隣の南米諸国の左派政権に供給。
・ブラジルで広がるフレックス燃料車(エタノールとガソリンの両方に対応)。エタノールはサトウキビを原料にする。ガソリンより安い。 油田も次々に発見され、いずれは原油輸出国になる。
・バイオディーゼル燃料として使えるパーム油。軽油の代替として注目される。
・インドネシアはバイオ燃料の原料となるヤシ、キャッサバなどの植物が豊富
・GTL(Gas To Liquids):天然ガスから軽油などの液体燃料を生産。環境に優しい
・ヒンドゥー教では花嫁に金銀のアクセサリーを持たせて嫁がせる。ダウリー制度(持参金制度)。インドの婚礼シーズンは9月。
・イスラエルの輸出の1/3をダイヤモンドが占める
・クロム鉱石:ステンレス鋼などに多く使用される。南アフリカが世界最大の産出国
・BRICsの消費市場は2006年に日本を追い越した
・シュラスコ:ブラジルの国民料理。
・人口は幾何級数的に増加するが、食糧は算術級数的にしか増加しない。多くの人が貧困に追い込まれる
・インドの人口の4割は厳格なベジタリアン。ヒンドゥー教では殺生が禁止されているため。イスラム教は豚を忌避する。
・VISTA:著者が提唱するポストBRICs。地理的に分散。人口規模も大きい。若年人口も多い。購買力のある中産階級の増加。政情が安定。
・ブラック・ダイアモンド:南アフリカで台頭する黒人の中産階級。人口の8割が黒人。黒人の社会進出が進む
・北京郊外70kmまで砂漠化が迫っている
・トリクルダウン効果:富裕層が消費をすると、そのおこぼれによって貧しい人も潤う

-目次-
第1章 コーヒー党、世界各地で急増中
第2章 寿司ブーム、BRICsに上陸
第3章 原油高とティッシュペーパー
第4章 CO2とオレンジジュース
第5章 レアメタルをめぐるお国事情
第6章 世界経済を制する新興国市場
第7章 成長と環境破壊のジレンマ