読書メモ
・「目覚める日本 〜泰平の世は終わった」
(関岡英之 :著、PHP研究所 \952) : 2009.12.23
内容と感想:
タイトルこそ「目覚める」日本となっているが、本書は日本人に覚醒を促す内容になっている。
サブタイトルにもあるように、経済大国と言われ、物質的には豊かになった日本は、現在は、
景気は停滞気味だがそれなりに生きていける「泰平の世」が続いてきた。
しかし世界状況も時々刻々と変化し、いつまでも安泰というわけではなくなってきた。
グローバル化の波が押し寄せ、世界との競争も激化。少子高齢化が進み、日本人の所得は年々減少を続けている。
だが中途半端に豊かだから、なかなか変化しようとしない日本。
そんな日本に喝を入れる本である。
第4章は平沼赳夫氏との対談。
日本は「泣き言を言いながらも案外心地よい無為に身を委ねるのをやめ」て覚醒せねば、という。
まさに今の日本人の状況を象徴する指摘だ。
第5章では北京五輪の際の、チベット問題に対するリレーへの抗議活動に著者が参加したときの生々しい状況が書かれている。
傍若無人を極めた中国人留学生たち。
それに対して「何も知らず、何も語らず、何の反応も示さない、底抜けにオメデタイ、ふぬけの日本人の群れ」と酷評。
厳重な警備の中、中国人による暴力行為が行なわれていたのにもかかわらず、外交問題に発展することを恐れ、事なかれだった日本。
外交といえば、アメリカや中国といった大国になびこうとする政財界の姿勢も批判している。
「日本人がまずなすべきは、外国に頼ることではなく、自主独立の気概を取り戻すこと」だと。
マスコミも国民も、政府や官僚バッシングを楽しんでいるようでもある。しかし、我々国民は、
「自国の政府や官僚を、もっと激励、支援して、挙国一致で叡智を結集しなければ、この国難を乗り切ることはおぼつかない」と著者は憂えている。
また、アメリカから毎年、突きつけられてきた年次改革要望書。英語の原題ではこの「改革」はreform。
「過去数十年、わが国は毎年、ひたすらリフォームを繰り返してきた。(中略)理由も必然性も検証せず、脇目もふらずに言われたとおり」にやってきた。
そのやり方・姿勢、その成果にも疑問を感じている。ときの政権はいつも「改革」を叫んできた。しかし我々は幸せになったのかと。
やはりここにも「自立」の精神の不在という根本的な欠陥が見出せる。
この国のあり方を自ら考え、確固たるビジョンとして示し、それに向けて国民が協力していけるような、そんな流れが大きくなるといい。
○印象的な言葉
・米国の対日姿勢は冷ややかで損得ずくのギスギスした底意地の悪いものになる
・強者が一人勝ちして敗者を一顧だにしないアメリカ的合理主義、精神の荒廃
・地道な生産活動が疎かにされ、経済そのものが虚業化、倫理観の喪失
・ブラジルのルーラ政権は左翼。国際社会で既成秩序に挑戦
・米国の裏庭、南米では反米左翼政権が林立。地域連合CSN(南米共同体)構想
・新自由主義、市場原理主義は歴史的使命を終えた。政府は経済に介入すべきでないというイデオロギー。アングロサクソンの伝統的価値観。
・ドイツ、フランスも間接金融中心
・日本の外貨準備100兆円を国内の救済に活用せよ。大半は米国債に化けている。円高阻止のために円売りドル買いしてきた成果。
原資は短期国債(TB)。輸出企業に補助金を与え続けてきたようなもの。米国債は「売るに売れない究極の不良債権」
・米国債を売却すればドル安になり、原油や食料の輸入代金の高騰を相殺できる。消費者、畜産農家、漁業関係者の痛みも緩和。
今、手をつけるべき。ドルが暴落してからでは遅い。
・日本人は共同体に帰属し、後顧の憂いを払拭されたとき、安心して仕事に没頭できる
・自民党は社会民主主義を取り込むことによって左翼政権誕生の萌芽を摘み取ってきた
・中国、ロシアの台頭。市場や個人より政府と国家が優位に立っている。世界は市場の時代から国家の時代へと回帰しているよう。
・先物取引に実需の裏づけの証明を義務付ける「実需原則」を復活すべき
・投機は世界経済を「死に至らしむ病」
・北京五輪の長野での聖火リレーでは数千人の中国人留学生が動員された。中国大使館が費用を負担
・在日韓国・朝鮮人は平成4年をピークに減少、中国人は急増。中国は移民の送出も国家戦略の一環。
・ドイツでは労働力不足を補うためトルコなどから大量に移民を受け容れた。福祉予算の半分を移民対策に充てるはめになった
・フランスではアラブ系やアフリカ系移民に対する職業差別がなくならない
・英語社会とスペイン語社会に分断されつつあるアメリカ
・日本にはフリーターが200万、ニートが60万、専業主婦が1,600万人いるのになぜすぐ「移民を入れる」必要があるのか。高齢者パワーもある
・言葉が乱れている、ということは思考の乱れ、精神の乱れ
・日本はせっかく積み上げてきた莫大な債権、資産を活用できていない
・尊皇攘夷の「攘夷」とは外国に隷従しないこと。開国したのは大攘夷を貫徹するため
・日本の上場企業の株式の28%が外資に握られている(H18年度末)
・全国にチャイナタウン化計画が進行中
・確固たる国家観に立脚し、真の国益を追求する
・一国の政治の水準はその国の民度の反映
・アジア通貨危機でアジア諸国は米国の投機家たちの金儲けの標的にされ、蹂躙された
-目次-
第1章 金融サミットと日本の目覚め ―自壊を始めた米国モデルから脱するとき
第2章 市場中心主義と個人主義を問い直せ
第3章 アメリカ国債を売却せよ ―日本の「真の構造転換」に向けた思考実験
第4章 「平沼新党」勝負のとき ―真の保守として日本人の底力を引き出したい
第5章 国家主権が蹂躙された“あの日”の真実
第6章 「改革」は誰のためのものだったのか ―グローバリズムというプロパガンダの欺瞞
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