読書メモ
・「まほろばの国で」
(さだまさし :著、幻冬舎文庫 \533) : 2009.12.14
内容と感想:
タイトルの「まほろば」とは「あとがき」によれば万葉語で、国の中心・最高の場所を指すそうである。
日本は素晴らしい、と伝えたい思いで付けたタイトル。
本書は1998年から2002年にかけて「まっさん」が毎日新聞に書いたコラムを集めたもの。
音楽だけでなく、社会問題など幅広い話題を取り上げて書いている。
日本という国を愛するが故に、この国について問題提起し続ける「まっさん」。
バカ親や馬鹿マスコミを愚痴ったりしているが、
ここではやはり音楽がテーマの文についてだけ触れることにする。
「ツアー」という文章の中で、
ミュージシャンとして「一番怖いのは慣れから来る無感動」だと書いている。
「常に新しい気持ちでステージに上がり続けることこそが最も大変なことかも知れない」。
今年58歳の彼だが、今も歌い続けられるのは気持ちの切り替えの上手さもあるのだろう。
「言葉の持つメロディー」という文では歌作りについて、
「伝えたい相手と伝えたい言葉さえあれば誰だって歌を作ることは出来る」、「言葉には既にメロディーがある」と言っている。
まあ、売れるかどうかは別だが。
「初小説に託す」という文では、
「生命・時間・こころ、自分の意志や力だけではどうにもならないものを歌い続けてきた」と自分の歌のテーマ、原点について語っている。
本書を読むと彼の歌に対するスタンスがよく分かるだろう。
「ロッカー・中島みゆき」では彼女を称して、
「反骨とも拗ねるとも異なる自立した精神性」とロッカーとしての中島みゆきを讃えている。
著者は「日本架空説」なるアルバムを出しているが、「まほろば」を架空のままでなく真実に近づけていきたいものだ。
○印象的な言葉
・二十四節気:一年を24の小さな季節に区分し、生きるリズムを作り、生きる楽しみを生み出した、先人の知恵と感受性
・子供が壊れたのは親が壊れたから、恥知らず
・恥とはメンツのこと、深い心が支えるのはプライド
・ラジオの時代は地方文化の薫り高い時代。それが終わり、中央集権的放送界に変わった
・人は生まれるときに自分の太陽を持って生まれてくる。その太陽に向かって伸びようとする
・じいっと抱きしめて、自分の体温で語る父性愛
・生きるという事はもっと泥くさい事
・事態のすべては我々が選んで来た結果の積み重ねが招いた。この国の未来に申し訳ない
・卑怯卑劣極まりない事件は、我々が曖昧に許して来たモノのなかに混入している
・「あなたの護りたい笑顔を思おう。どうしたらそれを護ってやれるか考えよう」それが「平和を守る原点のひとつ」。「夏・長崎から」
・人に元気を出してもらう仕事はすてき
・エセ・ヒューマニズムがいろいろなものを傷つけていく。無礼な報道、卑怯卑劣な取材。それに踊らされること。守るべきものを平然とはぐらかす。
・沢山の中国残留日本人孤児を育てた中国人がいたことを忘れてはいけない。自らが生きるにも苦しかったはず
・自分の卑しい思い上がりが悲しい
・サル真似:チープで、軽い、誇りもない
・日の丸・君が代問題:反対派・賛成派は互いに議論すべき。うやむやにするのはだらしない、狡賢い
・間違いを認めぬ不幸の道より、過ちを重ねない幸福の道をゆこう
・3〜4世紀に邪馬台国を壊滅状態に追いやった、九州を襲った超大型台風。当時、博多湾と有明海は瀬戸でつながっていた
・斎場で取材するマスコミはきちんとした服装で来るべき。弔意を示すべき
・長崎に落ちた原爆は初めは小倉を狙ったものだった。目標探しに時間も燃料もロスした結果の投下
・アメリカの日系移民。馬鹿にされぬよう、故国を背負いながらプライドを高く護りながら生きてきた
・感謝を忘れれば人は傲慢になる。心や想像力が欠落すれば表面だけが全てになる
・TVからアホが感染する
・緩やかな愚民政策の結果、見事な愚民国家になった
・歪んでいるものを正そうという正義感
・叱られないことで勘違いした子供たち。真剣に叱ってやる
・さだまさしの心の中にだけ存在する日本という名前の架空の国
・流した汗の尊さに差はない
・遊ぶように仕事をする。仕事を遊びに出来る才能。飄々と見える
・優雅でしなやかで温かい、芯が強い、聡明で優しい、明るく眩しい
・誰でも知っている言葉で誰も表現しなかった事を言うのが詩人
・身体をすり抜けていく「時間のつぶ」がゆったりと大きい
・選挙カーは公害。聞いていもいない聴衆に繰り返し叫ぶだけ。人柄も政策も伝わってこない。
・政治家はタレントの天下り先(北野武)
・市井に生きる精一杯の小さな生命。小さな人生を肯定しながら精一杯生きる喜び
・表現者は違うと思うことを違うと叫ぶ
・人は生命の危険が現実的にならなければ生命を大事にできない生き物
・凄いねえ、頑張ったねえ、偉いねえ、ありがとう、ご苦労様
・正しいことを正しいと言うのが気恥ずかしいという時代は変だ
・現代日本の不幸は初等教育の軽視に始まった。子供が最も沢山のことを吸収する時期にこそ最も大切な心の部分を育てなければならない
<感想>
・聖飢魔Uは新世紀になってどうなった?
・花粉症とカンフーショー
・次から次へと話題の標的を探すマスコミ。それで潰される人。それを面白がる世間の陰湿さ。
・懐かしいペンギン・カフェ・オーケストラ
・twitterは断片的、感情的、書きなぐりに近い。一時の薄っぺらな感情
・実話「償い」
-目次-
1998
秋桜 ―百恵さんに捧げた日本のうた
御神渡り―科学以前の先人たち ほか
1999
的場均騎手 ―馬への「愛の示し方」に惚れました
アメリカ的生活観 ―サル真似のツケは大きいよ ほか
2000
第二月曜が成人の日に ―平和ボケの世紀末
自由主義と利己主義 ―西海岸の教習所で ほか
2001
二人のヴァイオリニスト ―庄司紗矢香さんと五嶋龍君
こころのタイムカプセル―つくば万博からの手紙 ほか
2002
加藤シヅエ先生逝く ―心底尊敬できる母
和名に触発されて ―アルバム『夢百合草』 ほか
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