読書メモ
・「「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い 〜禁じられた数字〈下〉」
(山田真哉 :著、光文社新書 \700) : 2009.07.05
内容と感想:
ベストセラーの下巻。「会計の本質」に迫る本。
本書は2つの目的をもって書かれた。
1つは数字に騙されない考える力を付けること、もう1つは会計の限界を知ること。
ときに数字は人を騙す凶器にもなる。数字のウソを学び、数字の裏側を読めるようになってもらおうとしている。
また、会計が分かればビジネスが分かる、といった誤解を解こうとしている。
第2章と第3章ではストーリー仕立てのケーススタディを用いて解説している
第2章は「計画信仰」からの脱却がテーマだが、「脱予算経営」という言葉が出てくる。
予算計画を廃止した経営のことで、KPI(重要業績達成指標)などの基準を設けて、目標に向けてのプロセスの進捗状況(達成度合い)を
定量的に示そうというもので、ビジネス環境の変化に対応するための新しい考え方である。
第3章では経営の効率化について二分法を使って説明し、視点を変えるとどちらも正解ということになってしまう難しさを示す。
その上で、第4章では二分法を超えた「第三の道」(妙手)について考えている。
優れた経営者は相反する利益の両方を実現する妙手を考えているものだという。
終章では「ビジネスと会計とでは求められる能力がまったく異なる」と言っている。
会計は科学的で再現性があり、反証可能であるが、ビジネスは全く逆なのである。
会計は数字だけの世界だから分かりやすいが、ビジネスは人・物・金などあらゆる要素が複雑に絡むから、
しごくまっとうな理解であろう。会計が分かれば必ずしも上手い経営が出来るわけではないことは明らかだろう。
○印象的な言葉
・数字がもつ信頼性と暴力性。人を惑わす卑怯な数字もある
・数字で感情を揺さぶる
・会計は数字から感情を排除する
・禁じられた数字(禁じ手):作られた数字、関係のない数字、根拠のない数字、机上の数字
・困ったときの切り札・費用対効果(コストパフォーマンス、CP)
・デキる人は二分法で話す。ひとつの問題を二つに分けて話す。物事を分かりやすくする。
単純な結論になりがち、平凡な発想を生む土壌になる
・中小企業には黒字でもわざと赤字にしている会社が多い。黒字だと税金を多く取られるため
・平均値はあくまで目安
・在庫も資産の一つ。他社への投資(出資金)や貸付金も資産
・ビジネス環境の変化の激しい時代。計画の必要性はどれくらいあるか?計画が難しくなった。
毎月、毎週でも変化に合わせて計画を修正していく。変化に応じたカードをいくつ持っているのかが問われる
・伝統的な予算計画は誇示や企業から自由を奪い、ムリ・ムダ・ムラを生む
・売上:価値を認めて金を払ってくれた人がいる。社会に対して価値を生み出している
・人件費の高いベテラン層をリストラし、赤字店を潰すという安易な効率化は会社の力を弱める形だけの効率化。
目先の利益にとらわれて長期的な利益を失う
・三位一体営業:営業マン、設計スタッフ、工事スタッフが一緒に営業。顧客のあらゆる質問に即座に対応
・ドミナント戦略:特定の地域に集中して店舗展開。商品の輸送が効率的
・内部統制、J-SOX法の問題点:文書化しづらい業務も多い、監査人がチェックするのにお金がかかる
・税金徴収の効率を優先するなら消費税が優れる。お店だけを相手にすれば済む。所得税・法人税は国民一人一人、個々の法人を相手にしなければいけない
・数字のセンス:うまく使いこなす、騙されないセンス。複数の視点を持つ。数字を通して考える力をつける。数字に対して自覚的、批判的であれ
-目次-
第1章 数字の達人は、特になにもしない ―数字のウソ
第2章 天才CFOよりグラビアアイドルに学べ ―計画信仰
第3章 「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大間違い ―効率化の失敗
第4章 ビジネスは二者択一ではない ―妙手を打て
終章 会計は世界の1/2しか語れない ―会計は科学
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