読書メモ

・「人の心をギュッとつかむ好感度UPの法則
(齋藤 孝 :著、大和書房 \1,400) : 2009.01.18

内容と感想:
 
近年、日本は好感度が支配する社会となったと著者は指摘する。 好感度を気にしながらでなければ生きていけない雰囲気が人々を圧迫していると言う。 それを「生きづらい好感度支配社会」と表現している。 社会があまりにも人気投票的になり過ぎているのだ。
 人の評価をするときに表面的な部分でしか見られない人が増えているとすれば寂しいことだ。 特に子供たちの世界ではその負の部分が大きく、いじめや学校裏サイトの問題も生んでいるという。 実際にそうした表面でしか評価されないとすれば、 他者の視線で自分を作らねばならず、自己演出していかねばならなくなる。
 そんな社会ではどうすれば生きやすくなるか、について方法を2つ挙げている。 一つはメディアリテラシーを身に付け、発信者の意図を見抜くこと。 もう一つは好感度を有効活用し武器にしてしまうこと。 私がもう一つ挙げるとすれば、他人の評価なんか気にしないことだが、 それが出来ないからきっと生きづらいのだろう。
 著者は本書を「信用度ある好感度」を身に付けてもらうことを目指して書いている。 しかしそれは容易ではない。 表面的な薄っぺらな好感度アップのテクニックならすぐにでも身に付けることは出来るが、 安いメッキは剥がれやすいもの。つまり人間を磨け、ということだ。
 第1章では好感度から見た日本社会の分析、 第2章と3章では好感度アップのためのテクニックが、 第4章には古今東西の有名人の魅力を好感度の視点で分析している。
 「あとがき」にもあるように好感度支配社会ではいい人間関係が築けないし、生産性の高いチームを作れない。 著者は本書が「素晴らしい人間関係作りに役に立てば」と願っているのだが、そうした社会に戻すには我々の価値観を変えていかねばならない。 信用・信頼が失われつつある今の日本に必要なのは、互いを人間の中味で判断できる知性と、見た目が悪くても許せる寛容さ、 他人の目を気にするのではなくお天道様・神仏など何か超越したものに見られているという意識を持つことなのではないだろうか。

○印象的な言葉
・実質から記号への転換。見かけや感覚が重視される社会に変わった。
・ブランド信仰。ブランドは好感度のカタマリ
・良い面と悪い面のアンビバレント(両価値的)
・人間としての幅を広げ、ポジションを得て、そこで何事かを為す
・利より名を惜しむ
・人は笑顔に一番反応する
・隙のある子供っぽさ、オープンさ、うかつさ、腹を見せる潔さ、素朴さ
・毒と崩れ、やんちゃ
・純粋さ、切なさ、ナイーブさ、傷つきやすさ
・ストイックさ、一生懸命さ、何の企みもない、ストレートさ
・意外性
・情けがある、人情、情の細やかさや濃さ、不器用さ
・愛情、熱いものを持つ、情熱
・軽やかさ、軽妙
・何を優先させるかという原理原則を持つ。爽やかさ、さっぱりしている
・損得で物事を考えない、懐の深さ
・生命力、活力
・ノンバーバル(非言語)コミュニケーションの重要性。人の評価は表情や仕草など第一印象で決まる。
・即断社会:パッと見た印象で人間を判断。じっくり見極めていく余裕と優しさがない。人を受け入れる範囲が狭くなった。
・ある種無個性で、ほどほどの好感度の人たちが集まる、均質化された社会。当たり障りのない浅めの付き合い。 インパクトに欠ける、存在感のなさ
・地道な自己形成の仕方が流行らなくなった
・想像力の欠如は知性の欠如
・知りもしないくせに悪い評価をする傾向。何の根拠もない意見。 小学生が根拠もないのに総理大臣をバカにする社会は健全ではない。歪んでいる。 能力の低さが好感度につながるこの国のありように危機感を抱いている
・トラブルに対して動揺せず落ち着いて判断できる冷静さ、喜怒哀楽に流されず、いつも穏やかに心を保っていられる
・自分には不都合であっても、全体から見た方向性として良いものを選ぶ大局観
・勉強量が信用度を作る、博学
・風格、学識、構想力
・威嚇するときは怯えているとき
・人生経験を経たゆえの深みのある笑顔。いろいろなものを受け止めてきたからこそ出る笑顔。全てを静かに笑って見ていられる。 人生の酸いも甘いも噛み分けている。激しない、キレない
・自分と似ているという類似性に好感度を抱く。同じ価値観、自分の味方だと思う
・感情は口に一番表れる
・勉強することがあまりに蔑まれてしまった
・「水に流す」気楽な国民性
・縁あって同じ場所に立った者同士が、このチームで頑張っていこうと腹を決めたとき人間関係は豊かになる

-目次-
第1章 ニセモノの好感度に振り回されない
第2章 「ホンモノの好感度」を身につける
第3章 いい人間関係は身体で作られる
第4章 なぜあの人は魅力があるのか?