読書メモ

・「よくわかる機械制御の基本とメカニズム
(城井田 勝仁 :著、秀和システム \1,600) : 2009.04.06

内容と感想:
 
制御工学の難解な数式は思い切って省き、図解で初心者にも理解しやすく書かれた本。 ロボットなどに興味がある人にはメカトロニクスの「超入門」として良い。 シーケンス制御やフィードバック制御、PID制御など様々な制御方法を事例やイラストによって紹介し、 制御の考え方や、制御を支えるセンサー、コンピュータ技術にも触れている。
 最後の第8章は産業用ロボットから宇宙、軍事用のロボット、ホビー用ロボットなどを取り上げており 読者の興味を引くだろう。若い人たちに「ものづくり」に興味を持ってもらえる本である。

○ポイント
・モデルベースト制御:制御対象を解析しモデル化し、最適な制御装置を設計する。制御対象が複雑で、要求性能が高いものに有効。
・H∞制御:ロバスト(頑強、剛健)制御を実現する方法。制御対象を点ではなく円として捉える。これを実用的にしたMATLAB
・インバータ制御:モーターに供給する電力の周波数を変更することで回転数をなだらかに変化させる。 低速運転時は電力消費も少ない。交流電力を一旦、直流に変え、再び必要な周波数の交流に変換する。
・慣性の法則:回転する物体には回転する方向を維持しようとする力が作用する。ジャイロスコープ(地球ゴマ)
・フィードバック制御機構を含まないステッピングモータはサーボモータとは呼ばない。高速回転が難しく、大きな負荷に弱い
・目標値が一定の定値制御と、変化する追値制御
・フィードフォワード制御:制御対象に対する正確な知識が必要。外乱により制御量が大きく変化するものに対しては不向き
・適応制御:制御対象の特性が十分に把握できておらず、フィードバック制御では制御しきれなくなる場合に有効。制御ルールをあとから変更できる。
・クリスプ集合:0か1かなど、曖昧さを含まない情報。二者択一
・ファジィ集合:中間値を許容
・最適制御:制御工学でも利用されるが、一般的にはシステム工学に分類される。システムの安定よりも最もよい方策を求める
・フィードバック制御:計測結果に応じて制御するため常に後追いの制御となり、遅れがある
・P制御(比例制御):操作量は制御量の変化に比例。定常的な偏差(オフセット)が残る。オンオフを細かく実行するスイッチング制御を用いる。電力消費を抑えられる
・I制御(積分制御):偏差の状態を積分計算し、フィードバック制御し、オフセットを解消する。
・D制御(微分制御):偏差の変化量が大きいときに操作量を大きくする。応答速度を改善。PI制御は応答速度が優れない
・アクティブセンサー:計測対象に何らかの働きかけを行う能動的なセンサー。例)超音波や光を使う距離センサー
・超音波センサー:発射した音波が跳ね返ってくる時間で距離を計測。騒音がひどいところ、風が強いところでは誤動作の恐れ
・赤外線センサー:跳ね返る角度から三角測量で距離を測る。透明な物体は透過してしまうのが弱点
・CdS(カドミウムと硫黄の化合物)センサー:応答性はよくないが、安価で高感度、小型軽量
・フォトダイオード、フォトトランジスタは応答速度に優れる
・サーミスタ:感度がよく、小型化に適した温度センサー
・高度に制御されたロボットなら感情表現が乏しくても人間側が感情移入すうることで、不足分を埋めてしまう

-目次-
第1章 すべての機械は制御される
第2章 制御には歴史がある
第3章 制御にはさまざまな方法がある
第4章 制御の基本はフィードバック
第5章 制御はこう考える
第6章 センサー技術が制御を支える
第7章 コンピュータによる機械制御
第8章 活動状況に応じたロボットの制御