読書メモ

・「下流社会 第2章 〜なぜ男は女に“負けた"のか
(三浦 展 :著、光文社新書 \720) : 2009.09.20

内容と感想:
 
「下流社会」の続編である。 新たに実施したアンケート調査結果をもとに職業別、雇用形態別に下流意識を検証している。 調査対象は主に20〜40代である。 膨大な図表を駆使して分析結果を披露している。それだけに考察が薄くなっている感は否めない。
 衆院選挙における投票行動やナショナリズム意識なども調査し、層別に価値観を比較している。 政治的な意識や行動などのギャップが明らかにされている。
 検証結果として「はじめに」では「現代社会における最大の価値は個人の自由」だと著者は再認識している。 多様な価値観を持つ時代。自由の価値を重視するということは、言い換えればそれだけ不自由と感じているということになる。
 第3章では「雇用が不安定な人、所得の低い人が、必ずしも政治に強い不満を持っていない」と書いている。 これは無関心を意味するのか、諦めを意味するのか。 行き過ぎた自由の追求が、他人との距離を広げ、絆を緩め、あるいは断ち、社会の連帯を弱めていないだろうか。
 本書は「消費社会研究家」としての調査結果であるが、時代の転換期にある日本の混迷ぶりや不安定さ、不安感などを 再認識させられた。そんな時代を生きていくために我々は当分、模索し続けることだろう。

○印象的な言葉
・正社員であることの価値が相当低下している
・管理職より平社員のほうが満足度が高い
・無口な職人が生きづらい時代
・他者への不信や嫉妬
・男性は自分の給料だけで家族を一生養う自信を持てない
・新自由主義的競争は低価格競争に陥り、商品やサービスの質を低下させる
・ロハス系男子:仕事以外の様々なことに関心をもつ
・ずっとフリーターでいても大丈夫な社会を作る
・正社員になるより、待遇を上げて欲しい
・背取り:古書店から安く購入し転売する行為。目利きが重要
・大学側は収入確保のためにやみくもに大学院生を入学させて、就職できない大学院生を増加させている
・勤労と納税の義務を果たさないからニートは批判される。年金も払っていない
・村上春樹独特の厭世的な雰囲気、やる気のない雰囲気
・地元志向が強い若者
・(働く地域、残業有無や出勤日数など)限定付き正社員

-目次-
第1章 すがりたい男たち
第2章 SPA!男とSMART男
第3章 上流なニート、下流な正社員
第4章 下流の自分探しを仕組んだビジネス
第5章 心が弱い男たち
第6章 危うい「下流ナショナリズム」
第7章 踊る下流女の高笑い ―女30歳の勝ちパターンはどれか?