読書メモ

・「会社の品格
(小笹 芳央 :著、幻冬舎新書 \720) : 2009.06.15

内容と感想:
 
著者は「リンクアンドモチベーション」社の社長である。 社員にやる気がない、上司が役割を果たせていないとか、あるいは相次ぐ会社の不祥事などなど、 日本の企業だけを見ても様々な問題を抱えている。 かつて「国家の品格」という本がベストセラーになったが、 「会社を品格あるものにすること」が「国家や個人に品格を持たせるための第一ステップ」だとの考えから本書は書かれた。
 本書では「会社の品格」を社員視点の4つの角度から議論している。 第二章では社員が自分の時間の投資先としての会社を、 第三章では自分が仕える上司を、 第四章では時間を投資する仕事そのものの意味を、 第五章では投資に対するリターンを見る視点の4つ。
 第四章に「意味報酬」という言葉が出てくる。 成熟期に入った日本では、社員に金やポストという報酬が約束できなくなり、代わりになるものが求められている。 仕事に意味や目的、使命感を求めているのだという。価値観が多様になった今、それも報酬の一つになりえるだろう。 社員がそれに気づく機会を会社は用意する必要があると説く。
 「おわりに」で今、この国が抱える最大の問題は「当事者意識の欠落」だと指摘している。 すべて誰かのせいにする、そうしても何も変わらないのに。そうなったのは自分にも少しは責任があると認識する必要がある。 著者が本書を書いた理由もそこにあるようだ。会社に依存し、国(お上)に依存し、過剰な期待をして、勝手に失望しているだけでは無責任で、 自業自得とも言える。

○印象的な言葉
・このままいくと日本という国はおかしな方向に向かってしまうのではないかという危機感
・国を変える具体的な行動、身近なところから考えていく
・社員が会社を監視、監督できるようなパラダイム、社員の視点
・社員こそ最大の投資家。社員に選んでもらえない会社に未来はない。会社に自分の時間・能力を投資している
・売り上げは市場での共感の総量。利益は市場から与えられた未来
・脳のシワばかりで心のシワのない上司
・ダメ上司に部下からイエローカードを出せる仕組み
・モチベーションクライシス。成果主義ではモチベーションの危機は解決できない。 お金とポストの配分ルールの変更に過ぎなかった。実現できたのは総額人件費の削減のみ。
・意味報酬。金とポスト以外の報酬
・自社の商品を喜んで買いたいと思えるか。自分の仕事を他人に薦められるか、誇れるか
・組織の仕事は目的が見えににくくなる。機能分化、階層分化
・選択の余地と機会
・会社は誰のものか?一面では株主のものだが、経営者や社員のものでもある二重の所有関係。矛盾をはらんだ存在。 株式会社が誕生した頃から儲けを追及する傾向が強まり、資本主義と結びつくようになった。 そこに関わる人たちの欲望を効果的に実現する手段としても機能する。カンパニーの語源はカンパーニャ(パンを分け合う人々)。
・会社はいろんな人が自分なりの意味を投影する共同幻想体
・有限責任しか負わない株主が責任を問われることはない
・最終的に誰も無限責任を追う存在がいないという会社の恐ろしさ。無責任の連鎖が広がりかねない。
・CSR(企業の社会的責任)。本質は会社の品格にある。
・社員は一人の社会人であり、一人の消費者でもある
・組織に過剰に適応していないか。社会という外部から見ておかしくないか。歪んだ頑張りをしていないか
・ビジネスとは社会に対するコミュニケーション行為。メッセージを発している。使命や目標によって社会と接続されている。 商品やサービスは伝わりやすくするためのメディア。どんな世の中にしたいか、どんな業界にしたいか、どんなライフスタイルを提案したいか。
・組織における血流はコミュニケーション。これが滞ると組織の病気は慢性化する。組織の問題は人ではなく人との「間」に起こる
・社員が一緒に考え、議論し、言語化する時間・機会を設ける
・効力感:自分が関与できる、結果がフィードバックされる。工夫の余地がある。個人の判断が生かせる。裁量
・給与などの処遇は会社から社員へのメッセージ。コミュニケーションであり、メディア。
・会社が社員を縛り、飼い殺しにする
・会社と社員との貸し借りの関係は作るべきでない。長期雇用前提の従来の後払いシステムから即時清算システムへ。
・正解があった時代から、正解を創り出す社会へ。
・自分次第で大きな自由を得られる時代
・投資指標に人材が登場しないのは不思議。ヒト・モノ・カネのうち最も重要な経営資源であるヒト。財務諸表には表れない
・カネを越えたブランド、意味、物語、共感

<ネタ>
・採用シーンは会社の品格を見るにはいい機会。→就職活動中の学生に各社の採用担当への逆評価をしてもらう

-目次-
第1章 今、会社の品格が厳しく問われている
第2章 組織の品格
第3章 上司の品格
第4章 仕事の品格
第5章 処遇の品格
第6章 経営者の品格、社員の品格