読書メモ
・「グーグルが日本を破壊する」
(竹内一正 :著、PHP新書 \720) : 2009.04.12
内容と感想:
Googleが破壊するものとはいったい何か?
テレビ業界、CM業界、携帯電話業界、新聞業界などなど。
ネット広告の成長により、テレビや新聞といった既存の広告メディアが広告収入を減らし、
収益を圧迫し始めているという。一方で検索連動型広告で収益を伸ばすのがGoogleだ。
既存メディアを破壊するだけでなく、広告代理店のビジネスまでも脅かしている。
Googleは従来なら費用がかかりすぎて広告が出せなかった中小企業などにも低コストで広告機会を提供した。
広告会社を中抜きにしたからこそ実現できた。広告会社にとっては脅威である。
最近ではアメリカで新聞やテレビに広告を出すための仲介までもオンラインで始めている。
まだ日本ではテレビなど規制によって保護されている業界があるが、テレビも新聞も、広告会社も
これまでのビジネスモデルに胡坐をかいてはいられなくなるだろう。グローバル化とIT化の波とユーザニーズの変化にさらされて
耐え切れなくなる日が来るはずだ。
まだしばらくは日本では既得権者が規制や日本の商習慣、日本語の壁などに守られて、必死で既得権益にしがみつくことだろう。
恐竜のように突然滅びる日をじっと待つのか、自ら変わって生き延びようとするのかは彼ら次第である。
恐竜の滅亡の原因となる隕石に対するものがGoogleかどうかは分からないが、
少なくとも本国アメリカではテレビや新聞業界などは大きく変化をし始めていることが本書にも書かれている。
○印象的な言葉
・Google:広告主から広告料を得て経営する会社。従来、広告を出せなかった中小企業や個人経営事業者には追い風。
・ヤフーはかつて自社の検索技術にGoogle検索を採用するというミスを犯した。無名のGoogleの知名度を上げた。
・広告代理店不要論。広告会社を中抜きする。
・勝者はパクリがうまい
・ネット広告は費用対効果に優れる
・SNSの新規格「オープン・ソーシャル」。インターフェースの標準化。情報を集めるためのクローラーがSNSに入っていけるようになる。
・売り上げ成長率よりコスト上昇率が高く、収益を圧迫し始め、高コスト体質になりつつある
・EQリーダー:部下の感情を理解し、納得を生み出し、共感するポイントを見つけ出す。組織と個人に快適な雰囲気を作り出して、
潜在能力を引き出すソフトなマネジメント手法。
・スティーブ・ジョブズ:部下に強烈なプレッシャーをかけ、不安にすることで能力を引き出す
・フェアユース(公正利用):著作権者の許可がなくても、非営利目的で利用する場合は著作権侵害とみなされない
・百度(バイドゥ)が中国で強いのは中国文化と中国人の価値観、ユーザニーズを深く的確に把握しているから
・次世代の検索技術:意味や意図を理解する能力を備えたもの
・テレビ視聴者は主導権を取り戻すべき
・ブランドイメージのアップには広く浅くの広告も有効。総合家電メーカーなど。
・メディアやデバイスにかかわらずコンテンツを提供することを目的とするBBC
・NHKの有料のネット配信。受信料で作った番組の再放送に再びお金を払う必要はない
・日本人の弱気の遺伝子。強い相手に対して抵抗せず従うのが生きていく最善の方策だった。争いごとを好まず、長いものには巻かれ、
「和」を最も貴い価値とする文化。おとなしく文句を言わない。
・世界の広告会社はメガエージェンシーと呼ばれる多機能かつグローバルな集団に変貌を遂げた。欧米の広告会社は「広告主の代理」だが、
日本の広告会社は「媒体と広告主の両方の代理」。日本は広告費が高く、広告主の不満も多い
・Google TV Ads:アドワーズのテレビ版。広告主がCM制作の依頼をオンラインで行なえる「Ad Creation Marketplace」も開始。
・アマゾンは2004年以降、営業利益率も最終利益率も下がり続けている。利益率は非常に低い(2007年は3%台)
・日本の記者クラブの閉鎖性。フリージャーナリストや外国報道機関は蚊帳の外。多くの税金を国際貢献に費やしても世界の誰も気づいてくれない。
・ニュースペーパー会社(新聞社)からニュース会社(情報社)へ。
・新聞は将来、巨大なメディア・インテグレータと小さな専門メディアに別れる。
・新聞社はどんな媒体にもニュースを軽く早く発信できる事業体に変わるべき。ネット新聞による読者との双方向化。
・新聞大国の日本には多くの既得権者が群がっている
・高度な専門情報やハイレベルな解説を提供する新聞には価値がある。
・Google検索で自分の人生を決めてはいけない
・日本発の検索エンジン「なずき」(古代日本語で頭脳の意味)。質問の意味を理解する。感性まで判断。
★ネタ
・Googleがもし広告主のビジネスまで破壊してしまうと自滅する
・Windowsが無料になる日
・「紙」頼みの日本の新聞社。プリンタ業界も同じ
・Google検索は今のところ「最良」というだけ。
-目次-
1章 グーグルはあなたをどう「操る」のか ―グーグルvsプライバシー
2章 グーグルはいつ没落し始めるのか ―グーグル像vsグーグルの現実
3章 つまらないテレビをグーグルは変えるか ―グーグルvsテレビ
4章 高収入で独占的な業界ほど破滅が近い ―グーグルvsCM業界
5章 携帯電話になにかが入りなにかが出ていく ―グーグルvs携帯電話
6章 新聞社がつぎつぎ倒産する日 ―グーグルvs新聞
7章 「日本型企業」マイクロソフトの落日 ―グーグルvsマイクロソフト
8章 グーグル後に勝つ日本の技術 ―グーグルvs次世代
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