読書メモ
・「漫画がはじまる」
(井上 雄彦、伊藤 比呂美 :著、スイッチ・パブリッシング \1,500) : 2009.11.29
内容と感想:
言わずと知れた『SLAM DUNK』、『バガボンド』の著者である漫画家・井上氏と詩人・伊藤氏との対談集(2008年の対談)。
タイトルを見たとき、なぜ今更、「はじまる」のかと疑問が浮かんだが、結局、よく分からなかった。
2009年11月23日にNHKのTV番組「プロフェッショナル・・・」に井上氏が出演したのを見たばかりで、
偶然にもこの本に出会った。一年も前の対談だったが、TVの内容がまだ新鮮に残っているうちに読めたことは、
両方の井上氏の語りが重なり合って、より彼の作品に対する思い入れが深まった気がする。
勿論、自分も『SLAM DUNK』、『バガボンド』の両方とも読んでいる。
伊藤氏は「あとがき」で『SLAM DUNK』、『バガボンド』は「現代の軍記物」だと書いている。
そこには時代こそ違え、登場人物の生き様や死に様が描かれているからだ。
そう言われて井上氏も合点がいっているようだ。
二つの作品の共通点は「戦い」を描いていること。
作者の苦労話を聞けるのは楽しいことだ。
○印象的な言葉
・『バガボンド』で「小次郎篇」(20巻)が終わったあと、描くことができなくなった
・ポジティブな何かが含まれていないと、物語に存在価値はない
・熱血ではなく体温は低いが、冷めているわけではなく、熱いものがちゃんと中にある
・「知らない」ことの強み
・プロとしての在り方。技術的なこと、仕事の進め方、プロの仕事
・「勝つ」のが「正しい」のか
・アメリカ人はよその子供に無闇に触れない。人を信じないのが前提
・ディテール。どこまで気が行き届いているか
・人の死を描くのは消耗する
・殺し合い。互いの合意。殺される覚悟
・苦しいときには原点に戻れ
・原作には共感できない部分がある。時代の違い、価値観の違い
・トラウマと克服。絶望と救済。自分を最終的に肯定して、救う
・自分の中にわだかまっていた問題を解決して死んでいく
・覚悟のうえで満足な死を迎えられるのなら、それは一つの幸せ
・休みも取れない状況でずっとやり続けてきた。もうこのレースはそろそろいい。いつも緊張状態。続けていると新鮮味がなくなる。
・これで正しいのか、正しい道を来ているのか?
・作者自身が経験して血の出るような思いをしていることが伝わらないと駄目
・軍記物、語り物の根本には仏教がある。それを聞かせるのが仏教を広めるのと一体だった
・少年漫画の基本は「少年の成長」、親離れ
・忘れられた日本人(宮本常一)
-目次-
見事なことば まえがき 井上雄彦
第一章『SLAM DUNK』を語りつくす
第二章『バガボンド』を語りつくす
第三章 漫画と言葉
井上漫画はお好きですか?「大好きです」あとがきに代えて 伊藤比呂美
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