読書メモ
・「アップルとグーグル 〜日本企業に迫るネット革命の覇者」
(小川 浩, 林 信行 :著、インプレスR&D \1,800) : 2009.02.23
内容と感想:
著者はアップルとグーグルを「IT業界という枠を超え、われわれの生活様式そのものを変革してしまうほどのインパクトを持つ存在」と持ち上げる。
確かに両社は世界の人々に新たなライフスタイルを提案し、新しいトレンドを発信し続けている。
穿った見方をすればどちらも目立つ存在だけに、2つを組み合わせた本を書けば売れるかも、という発想は分からなくもない。
両社の成功については語り尽くされた感もある。
Google社CEOのシュミット氏がアップルの社外取締役であることはよく知られるように、それ以外にも両社には密接なつながりがある。
だから両社をテーマに取り上げたことは、それほど意外なことではない。
洋物に弱い日本人としてはアップル礼賛、グーグル礼賛の書となってしまうのは仕方がないことか?
本書は両社のビジネスモデルの共通点と相違点を分析し、将来の展望と、両社に日本企業がどう対峙していくかべきなどについて語っている。
第1章では2社の共通項を探り、第2章では2社の相違に注目している。
第2章では2社を比較してこんな表現をしている。
「グーグルは道路をつくり、アップルは車をつくっている」。
グーグルの検索システムがインフラというのは言いすぎかも知れないが、それほどグーグルに依存する人が増えているということだろう。
私には水道管を敷くのがグーグルで、蛇口を付けるのがアップル、という比喩のほうがしっくりときた。
最大の共通項といえばどちらもインターネットをうまく利用しているということだ。互いに補完するようなビジネスをしているところもあれば、
一部では競合するビジネスもあったりする。
本の帯には「日本企業に足りないものすべてをこの2社が持っている」と書かれている。その彼がが持っているものが何かは本を読んでいただきたい。
2社と同じ事をやっても恐らく成功しないだろう。良いところは吸収していくことが大事で、正面から両社に対抗しようとするのではなくて、
両社にはカバーできない市場を切り開いていく必要があるだろう。
○印象的な言葉
・アップルはパソコン界のポルシェ、偉大なるマイノリティ
・相対指向ではなく絶対指向のアップル
・エンジニアを大切にするフラットな組織
・アップル:家電市場へも進出?iPhoneは交通システムにも有望?
・iTunesもGoogleEarthももともとは別会社が開発したもの
・荒唐無稽な絵空事を語るカルチャー
・現状に捉われすぎて本質を見落としがち。ライバル企業、ライバル製品との比較に追われがち。
・本当にいい仕事をする
・あまりに美しすぎて舐めたくなる
・余計なことをやったり、行き過ぎたやり方をしない
・アンケートやグループ調査ではユーザの本当に求めているものを探ることはできない。開発で重要なのは「観察」
・Webkit:オープンソースのWebブラウザ。ネット家電やカーナビなどでネット接続のデファクトスタンダードになる可能性。
・Googleのサイトにはマック関連情報を優先的に検索するページや、Googleのエンジニアが開発しているマック関連のオープンソースソフトを集めたページもある。
・iPhoneにはGoogleMapやYouTube専用アプリも搭載。周囲の無線LANの電波を見て位置を特定するスカイフックワイヤレス社の技術を搭載。
携帯電話の電波を使った位置特定技術も搭載。
・Googleはサービスの提供領域を次々に増やしている。コストはいつか何らかの手段で回収できればいい
・ポルシェの持つイメージ:反骨精神、反体制的、自由を愛する
・欠点だけを丸め込んでいくと製品がつまらなくなる
・(人間は)年を取ると皺ができるが、それがいいんじゃないか
・アップル製品は引き算で成り立っている。メカニカルな要素をいかにして排除するか
・GoogleMapを使ったナビシステム
・企業価値の高さは人材の豊富さに比例
・Googleはインターネットのボリュームと成長速度を算出し、それを上回る規模と速度を持つ環境を自前で作り上げている
・日本のベンチャーは売り上げ重視の成長を優先したIPO狙いか、偉大な中小企業として地道にやるか選択肢がない。凄い技術で尖がってみよう
・SOX法など内部統制に対する管理コストが高い
・いずれ「iモード」のビジネスモデルは破綻する
・ケータイが家電製品との連携の中でデジタルハブになる可能性。カーナビは車社会のデジタルハブに。
・グランドデザイン
・シリコンバレーではベンチャー経営者や技術者が失敗した経験を自慢し合い、失敗しやすい傾向や例証を議論している
・世界に打って出る気概
★ネタ
・ユーザが知りたいことを代わりに調査・アンケートしてくれるサイト
-目次-
第1章 世界を変え続ける企業アップルとグーグルの共通項
第2章 アップルとグーグル異なる戦略とビジネスモデル
第3章 アップルとグーグルの接近と日本にもたらす影響
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