読書メモ
・「「東大国語」入試問題で鍛える! 齋藤孝の 読むチカラ」
(齋藤 孝 :著、宝島社 \1,200) : 2009.07.12
内容と感想:
浪人時代に著者は東大の現代国語(現国)の入試問題を解いているときに、その「問題の奥深さ、内包するメッセージの豊かさに感嘆させられた」という。
「最高学府にふさわしい人間性を問うていることに気づいた」そうだ。
出題者が問うのは受験の点数より、「もう一歩先のことまで考えて欲しい。そうした人間に入って来て欲しい、というメッセージ」だと理解していた。
更に凄いところは「試験問題がそのまま教育になっている点」だとも言っている。
そうした意識から本書は東大の現国の入試問題をテキストに取り上げて、受験生だけでなく社会人や教育者にも「現国能力」の重要性を説いている。
現国能力は「社会に出て最も必要な力」だと著者は捉えている。
第一章ではその「読むチカラ」の重要性について述べ、第二章では東大の「現代文」の凄さについて説く。
第三章では東大・現国の入試問題を解く方法について解説している。
東大合格を目指す試験対策本ではないが、出題者の意図を理解し、解答に知的さ、アクティブさ、果敢な姿勢を表現することの大切さが書かれている。
読解力だけでなく、解答を文章で表現する力も必要とされる。
「まえがき」で「読むチカラを高めることは文化水準を高く維持するために必要」と書いているように、
国力を維持するためにも、「ゆとり」だけでなく、読み書きの力の底上げが大切だ。
○印象的な言葉
・問題を解く能力より、作れる能力を目指せ
・言い換え力、自分の言葉で説明
・対話とは共通理解を重ねる作業
・ジョークのおかしみは、文脈を外すところ
・世の中ではグレーゾーンでどれだけの共通理解を持つかが一番難しく、価値が高い
・間主観性としての客観性。複数の主観と主観の重なり
・読み方は複数ある
・唯一絶対ではないが、おおよそこの線
・古典は文化の蓄積
・教養として他者を自分の心の中に住まわす
・三者関係:問題文(テキスト)の著者、出題者、解答者
・引用力:別テキストとつなげることのできる能力
・見えないところにあるものを見る
・言葉を大事にし、言葉を練る
・解釈学的→系譜学的→考古学的な3つの視点
・「幸福も不幸もない」(仏陀)。そういう観点自体が無意味
・独り言的な言葉や文の氾濫。わかってくれなくても構わない
・言葉ですくい取っている現実は現実そのものではなく、自分の作り出した擬似現実
-目次-
第1章 実社会で必要なのは「読むチカラ」
第2章 東大の「現代文」は最高の良問
第3章 問題を解くヒント
第4章 東京大学の「現代文」を読む
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