読書メモ

・「ざっくり分かるファイナンス 〜経営センスを磨くための財務
(石野 雄一 :著、光文社新書 \720) : 2009.05.25

内容と感想:
 
ここでいう「ファイナンス」とは「財務」のこと。 「企業価値の最大化」をはかるための意思決定に役立つツール、と定義している。 その意思決定には投資・資金調達・配当の三つがあるという。 本書はファイナンスの基本を文字通り「ざっくり」学べるように書かれている。
 企業において財務と両輪をなすものには会計がある。会計が扱うのは過去の業績であって、 ファイナンスのほうは未来の数字を扱うことになる。 利益よりもキャッシュフローがより重視されるようになり、本書では財務の重要性を読者に理解してもらうことを意図している。 経営者には必読であろう。
 本書では企業価値の求め方、評価の仕方などにも触れており、ここから得た財務知識は投資家にとっては投資判断に、 経営者には企業価値向上のためにどうすべきかを知ることが出来るだろう。

○印象的な言葉
・企業において財務と両輪をなす会計。会計が扱うのは過去の業績。財務は未来の数字を扱う
・会計上の利益よりもキャッシュが重要視される。キャッシュは嘘をつかない
・現金商売が強い。販売代金がキャッシュで入り、業者への支払いは後になるため運転資金が不要。
・営業利益重視の時代。経常利益は日本だけの概念。
・損益計算書が原因で、バランスシートが結果
・投資家は2種類:株主は企業の成長性を重視し、債権者は企業の安定性を重視
・企業の事業活動とは「何かに投資すること」
・リスクマネジメントはブレーキでなく、ABSかエアバッグ。リスクを回避、またはダメージを少なくするもの
・WACC(加重平均資本コスト):投資家の要求に応えるために企業が資産を活用して生み出すべき最低限の収益率。 この値が高い場合は投資家は高いリターンを求めているということ。経営者にとっては資金調達コスト。
・ROIC(投下資本利益率):投下した資本に対するリターン(利回り)。経営者の使命はWACC以上のROICを上げること。
・EVAスプレッド:ROICとWACCとの差。この差をプラスにする、更に拡大することが経営者の使命
・投資家にとってのサプライズは、投資家と企業とのコミュニケーションがうまくいっていないこと
・フリーキャッシュフロー:投資家に自由に分配できるキャッシュフロー
・投資とはそれが将来生み出すであろうフリーキャッシュフローを購入すること
・「レバレッジをかける」とは「借入をする」こと。住宅ローンも同じ。「信用」とは借入をしてきたお金。
・収益性の高い企業は負債比率が低い。資金調達の機動性の点では増資より負債(借入)のほうが優れる
・社会インフラを担う企業などは将来のキャッシュフローのばらつき(リスク)が少ないため、負債は大きくてもよい
・負債の節税効果

-目次-
第1章 会計とファイナンスはどう違う?
第2章 ファイナンス、基本のキ
第3章 明日の1万円より今日の1万円 ―お金の時間価値
第4章 会社の値段
第5章 投資の判断基準
第6章 お金の借り方・返し方