読書メモ

・「図解入門 よくわかる最新組み込みシステムの基本と仕組み
(藤広 哲也 :著、秀和システム \1,600) : 2009.02.21

内容と感想:
 
デジタル家電や携帯電話など組込みシステムの基礎が図解で学べる本。
 組込みシステムとは何か、ハードとソフトの関係、具体的な商品(電卓や携帯型ゲーム機、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、DVDプレーヤ、電子キーボード) を取り上げたシステムの構成、組込み用OSなどを解説している。第3章では製品開発の流れにも一章を割いている。 最後の第6章では最も進んだ組込みシステムとして携帯電話を取り上げ、その複雑なシステムの仕組みを解説。
 2005年末に出た本だが組み込みシステムそのものや取り巻く環境などについてざっくりとした知識を得られる。 ブラックボックス化しすぎて複雑な製品の中身も、イラストも多くイメージしやすいだろう。

○ポイント
・オープンアーキテクチャの流れ
・量産品では1つの部品の数十円の差が億単位の利益差に跳ね返る
・通信機能:リモートからの保守・制御、情報収集、機能更新(アップデート)
・システムバス:アドレスバス、データバス、コントロールバス
・Pentium4は4,200万個のトランジスタを内蔵
・μmプロセス:半導体製造装置の最小加工寸法
・RS-422:RS-232Cよりも高速、長距離のデータ伝送が可能。1つの送信側に対して最大10の受信側を接続可能。最大伝送速度は10Mbps。
・CADによる論理シミュレーション:回路を論理的に検証。アナログ回路の検証は不可。 クロックとの同期ズレやノイズの影響は実機で検証。
・キースキャン処理:パネルやリモコンのどのキーが押されたかを検出
・ROMエミュレータ:プログラムROMの動作をエミュレーション(再現)する
・ICE:CPUの動作そのものを再現
・ワンチップマイコンやシステムLSIではピン数を減らす方向。システムバスをチップの外部に開放しなくなっている。 →ROMエミュレータ、ICEが使用できない→チップ内にデバッグ回路を内蔵(オンチップ・デバッグ機能)
・ホール素子:モータの回転数を把握するセンサ。パルスを出力
・ITRON:カーネル自体はサイズが小さく、リソースの制約にも柔軟に対応できる
・Linux:カーネルとデバイスドライバ、ファイルシステム、プロトコルスタックが密接に連携しているため大きなリソースが必要。主に32ビットCPUのシステムが対象。 マルチメディア関連の豊富なミドルウエアを備える。
・Linuxでのリアルタイム処理の実現:リアルタイムカーネルとリアルタイムスケジューラを拡張部分として実装し、Linuxカーネルはプロセスの一つとして扱う。
・T-Engien、T-Kernel:ソフトとハードの両面からの標準化。ミドルウエアを含めたソフトの移植性の高さ。第3世代の携帯電話でも採用。
・YUV形式:画像データを扱う方式。色情報を輝度信号(Y)、輝度信号と赤色成分の差(U)、輝度信号と青色信号(V)の3つで表わす。JPEGやMPEG-4で使用。
・日本のGDPの1割を組み込みシステム産業が担う(2005年のデータ)。組込み産業に従事する技術者のうちソフト技術者は46%。 企業の8割はソフト開発を外部委託。1/3の企業は海外へも委託。

-目次-
第1章 組み込みシステムとは何か
第2章 組み込みシステムにおけるハードウエアとソフトウエア
第3章 組み込みシステムの開発
第4章 実際の商品はどのように構成されているのか
第5章 OSを採用した組み込みシステム
第6章 携帯電話に見る組み込みシステム