読書メモ
・「英語より日本語を学べ ―焦眉の急は国語教育の再生だ」
(竹村 健一、齋藤 孝 :著、太陽企画出版 \1,500) : 2009.01.25
内容と感想:
ご存知、両氏の対談。テーマは国語教育。
竹村氏がホスト役的な立場で、齋藤に質問する形式が多い。
英語学習だけがテーマではなく、日本の教育における問題点を広く議論している。
第3章ではタイトルにもある英語教育を話題にしている。
二人は何も英語教育が不要だと主張しているわけではない。
日本では小学校の英語必修化や、英語を第二公用語とすることも賛否両論、議論を生んでいる。
英語力の重要性は理解しながらも、母国であり思考の基礎となる国語が疎かになるのでは本末転倒でしょ、
というのが本書の趣旨である。
脳みそが柔らかい子供の内に英語を学ばせたほうが効果的とは確かに思うが、
お二人が言うように自国の言語を十分にマスターした上で英語を学ぶほうが効果はあると私は思う。
竹村氏は「英語で世界の人々と格闘をして、日本が世界に示すべき主張を発信する人も必要」と認め、
日本のことを英語で発信し、世界によく知ってもらい、正当に評価してもらうには英語の得意な人が必要だと言っている。
しかし日本国民全員にまで英語力の必要性を感じていない。それは我々国民自身も感じているところではないか(英語コンプレックスはあるが)。
「本当に英語ができる人は5%でいい」というのは分かりやすい。
竹村氏は英語上達のための本も書いているが、
子供に早くから英語を学ばせようという風潮には疑問を感じている。
「あとがき」にもあるように英語は「コミュニケーション手段にすぎない」のだ。
子供の学力低下が問題になっているが、「英語力の重要な基礎になるのも日本語力」である。
ゆとり教育の上に英語の時間も増えたら、国語の時間がますます減らされてしまう。
小学校に効果的な英語教育が出来るのか疑問もある。国や学校だけには任せていられない。
危機感から既に自ら対策している親もいるだろうが、
子をもつ親や国民が声を上げて変えていかねば教育再生はないだろう。
○印象的な言葉
・日本のいいもの
・複眼的な視点。世界的な視野。100年、1000年の流れの中で見てみる
・日本は工夫することが武器
・実力を外に晒すことを怖がる子供たち
・身体を張って行動するという空気、骨っぽさ
・読書会:読書好きにする方法。読んだ本のブックリストを作成し、コメントを書き、他人にその本を紹介する。
読書活動への積極性を評価する。
・この20年間、本の値段は上がっていない
・本もベストセラーに一極集中化。良書を支える層が目減り
・コーランを読む子供たち:前後に体を揺すりながら呼吸。体得
・素読:文章の意味は二の次で、まず音読して文章のリズムに慣れる
・悩んでいる人たちが求めているものに応える書。分かりやすい主張。具体的な解決策。実効ある方法
・一般の人の感覚よりTVが遅れている。作り手の意識、出来上がったもののレベルが高くない。要求を見誤っている。
制作側が視聴者を誤解している。低く見積もっている。設定する基準が「馬鹿」なところにある。
・比較する思考様式の訓練
・先生の質を高める改革にお金をかけるべき。教師の専門性
・教師の採用システムの問題、採用側の問題。教師にも見習い期間を。ダメな教師は退出させる。
・生徒の成績が教師の能力を表わす
・学校で結果を出している教師が広く世に出て、それがきちんと評価される
・教科書の内容は進化せず、量的にも不足。40年前と比べて求められている能力は違っている
・大臣がリーダーシップを取れない。官僚も個人的な判断は下せない。決断しない政治家の責任
・四書五経:四書は朱子学の聖典とされ、五経は儒教の重要な経典とされる
・3拍子で覚える英単語
・英語の発音は約2,000種類
・日本の翻訳文化の水準の高さ。どんな言語の本も翻訳している。外国人も日本語が読めると多くの情報を摂取できる
・調身調息調心
・演奏に味が出るのは「溜め」にある
・スポーツなどでは相手の呼吸を乱したほうが勝ち
・絶えず少数意見的な考え方を採ることで、バランスを正しく取る
・国全体にとって必要と政治家が思ったらやるべき。国益のためにやる。
・反論するためには相手の言うことをよく聞かねばならない。話題、教養、勘が利く守備範囲が広い、引き出しが多い。
・相手の専門的な知識や話題をきちんと聞きだせる能力。深い話をする。
・いい答えを引き出そうとするインタビュー。知りたい勘所
・blink:瞬間。瞬間の閃き。限界までやり切って、煮詰めて行き過ぎると起きることも。脱力してくる境界点。
・緊張し、身体が硬くなれば脳の働きも硬くなる
・遠くに意識(気)を放っておいてそこに声を載せていく感じ。
・自発性を重視した効率化や質の向上を図る
・優秀な人材が日本の中央官庁に入らない流れが出来かかっている。官僚叩きで環境が悪く人気が落ち、質も落ちている。エリートとしての評価が低い。
優れた人が日本の国益のために働く気になれない。国にとって大切なことをやってくれる人がいなくなる恐れ。
・レベルの高い人を応援する雰囲気。公共性。彼らが我々の代わりにやってくれている。
※アイデア、メモ:
・TVはもっと高度で硬派な番組を増やすべき。それくらいの思い切りを見せるスポンサー企業がいてもいい
・学力試験で地域格差が出るのは当然。格差の存在を知ってこそ改善が始められる
・KYとは文脈力がないこと
-目次-
第1章 日本は「読書立国」をめざせ
第2章 いま、教育の何が問題なのか
第3章 日本語が豊かな文化を生み出す
第4章 東洋的身体技法を現代に生かす
第5章 文脈でコミュニケーション力を磨け
第6章 一瞬のひらめきを大切にしよう
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