読書メモ
・「デッドライン仕事術 〜すべての仕事に「締切日」を入れよ」
(吉越 浩一郎 :著、祥伝社新書 \740) : 2009.02.01
内容と感想:
全体的には「「残業ゼロ」の仕事力 」とほぼ同じ内容。
トリンプ社が「残業ゼロ」に出来たのも全社員がタイトルにある「デッドライン」を意識して仕事をするようになったから。
デッドラインを決めることで限られた時間の中で集中して、スピーディに仕事をする。ダメな場合でも結果がすぐに出て、リカバリーも早くできる。
変化の早いビジネスの世界ではやってみなければ分からないことが多く、行動しながら考えたほうがいい、というのが著者のスタンス。
本書の仕事術のポイントは2つだけ。毎日、お尻の時間(デッドライン)を決めて仕事をする(残業禁止)ことと、全ての仕事に締め切り日(誰が何をいつまでに)を決めること。
デッドラインの基本は「明日」で、ドンドン前倒しでやる、仕事は発生した瞬間に始めるのが一番効率が上がる(仕事の優先順位で悩むのは無駄)と言う。
著者は「仕事のアウトプット=能力×時間×効率」だと捉えているが、大きな能力向上は難しくても、効率は訓練次第で向上できると考え、
スピードアップ、効率アップを重視している。
だから第3章では「教育で人材なんか育たない」と言い切る。少し暴論すぎるが、社外研修なんかに短期間行って来ても
本人の意識が変わらなければ効果がないことは私も感じている。人材の育成はどこの会社も重要な課題であろう。
誰もが「仕事ができる」と認めるような「優秀な人は自分で仕事のやり方を身に着けてきた」という言葉に共感する人は多いかも知れない。
あえて反論するなら、部下が育つのを待つだけでは非効率だ。「背中を見せる」だけでは見てもらえない可能性もある。
何とかして暗黙知を(形式知にまではしないまでも)共有し、継承していく努力はしていかねば
組織全体として能力を向上できないし、世の中の変化のスピードについていけないだろう。
しかしトリンプ社の場合は「早朝会議」が育成の場となっていることは想像に難くない。
○印象的な言葉
・「時間がない」と言うわりに、すぐに片付くはずの仕事に手を着けず先送りにしてダラダラ働いている。惰性で残業
・足りないのは時間ではなくスピード
・判断の遅い企業は日常業務も間延びする
・仕事のアウトプット=能力×時間×効率。大きな能力向上は難しくても、効率は訓練次第で向上できる。
(制限)時間を固定すれば効率は必然的に上がる。必死で考え、工夫する。
・「撤退のルール」を決めて、迷わずチャレンジ
・ものづくりの現場である工場では昔から高い生産性を保つ
・「ワイガヤ」の元祖ホンダでは役員同士のコミュニケーション向上が目的だった
・がんばるタイム:取引先の理解も得る必要がある
・日常業務も小さな意思決定の連続
・自分の残業により部署のボーナスの原資が減ったら罪の意識が強くなる
・「余裕のあるとき」はいつまでたっても訪れない
・現場から遠いほど当たり前のことが見えなくなり、素早い判断ができなくなる。判断を下せるだけの情報がほしいなら現場の近くにいること
・情報共有により全員が同じ認識を持ち、「組織前提の判断力」を高める
・調整型リーダーはトップに向いていない。ときには厳しいことも言わねばならない。遠慮なくオープンに話せる雰囲気を作る
・社員のお互いのために一番いい判断が、会社にとって最悪の判断になるケースもある。会社に利益をもたらすなら、それは正しい判断。
・「会社のために」という目的の前では、社長も平社員も平等
・担当者が可能性を感じていれば、心意気を買って、冷めないうちにゴーサインを出すほうが成功率は高まる
・現場の謎めいた習慣。その場しのぎで思いついたことが意味もなく存続する
・ワークライフ・バランスの「ライフ」は私生活のこと
・観察し、見よう見真似で覚える
・中間管理職は「上」を変えられないが、「下」(部下)は自分の力で変えられる
・軍隊の現場の指揮官には司令部の許可を得ず、撤退の決定を下してよい権限をもつ
・フォロワーシップ:リーダーの行動を観察し、やり方を学ぶ。自分が上に立ったらどうするかという視点でものを考える
・独立を視野に入れたキャリア目標設定。
・よい会議は業務効率化に役立つ。情報共有。ある判断に至るまでのプロセスに共通意識をもてる。全員が同じ判断基準で行動できる。
会議は「物事を決める場」。解決策を考えるのは担当者、是非を判断するのはリーダー。方向性のズレを見極める。
・仕事の大半は創造力より、ロジックの積み重ねで処理できる範囲のものが大半
・誰かが何とかしてくれるという甘え
・経営者がコンピュータシステムの知識がなく、コンピュータ会社に任せてしまうため、システムをコンピュータ会社の都合で作ってしまう。
・長期計画など立てる必要はない。計画は出来上がった瞬間に古くなる。それよりも優秀な人材の確保が重要
・トップマネジメントが描くビジョンはボンヤリした骨格程度で十分。大まかな方向性を示すためのものでいい。
-目次-
第1章 仕事のスピードを3倍にする──まず、残業を止めてみる
第2章 即断即決──どうすれば決断力は身につくか
第3章 キャリアアップできる人間の思考法──仕事はゲーム、技は盗め
第4章 「会議」と「デッドライン」で部下を動かす──簡単で効果抜群なマネジメント手法
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