読書メモ
・「若いうちに読みたい太宰治」
(齋藤孝 :著、ちくまプリマー新書 \780) : 2009.12.26
内容と感想:
私が若いうちに読まなかった太宰治。
昔から読書好きだったが、そもそも文学作品を真面目に読んだという記憶がない。
真面目に読むものだという意識が文学を敬遠させていたのかも知れない。故に太宰作品もまともに読んだ覚えはない。
本書は著者が若い人に向けて、太宰治の代表作18作品を選んだ解説書。手遅れだが、ダイジェストだけでもと手にする。
太宰の特徴を「傷つきやすさ」と言っている。
その作家人生は「いい小説を書きたいとあがきながら、絶望もする」というものだったようだ。
それは若い人たちが一度は通過する悩みだとし、「まだ社会的にポジションが定まっていない状況の焦り」だと著者は捉えている。
2章で「人間失格」を取り上げている。
太宰は「イエスの深い感受性と優しさ、そして強さに憧れていた」のではないかと著者はいう。
憧れながらも彼はイエスになろうとはしなかったのだろうか?自殺未遂を繰り返したということは。
4章では「太宰は明らかに世間とずれている」のだが、「いつも世間を気にしている」ようだと書いている。
「そのずれは幸福感のずれ」でもあった。そのずれを修正しないまま彼は生きた。
結局、それが悲しい最期を迎える原因だったのかも知れない。
自分自身を深く掘り下げて、真剣に文学と向かい合った結果、行き着く先が自死とは・・。
これをどう理解すればよいのだろう?
○印象的な言葉
・むなしさに襲われるのは自分に気取りがあるから
・幸福とは悲しみの限りを通りすぎて、ふと得た砂金のようなもの
・愛とは深く理解すること。理解すれば相手を許せる
・Jポップの歌詞ははありきたり
・文学者は深く深く井戸を掘り続ける。命を懸けて、命を削るようにして書く
・ふわふわと揺れ動く、居心地の悪さ、何も確かなものがない、実感や手触りがない
・守るべきのものができると強くなる
・想像力の欠如→心は傷つかない。人の痛みが分からない。何か自分にできることはないか
・心の重さを受け止めてくれる富士山
・どうこのけりをつけたらいいか分からない
・自尊心と上手に付き合わないと精神のバランスを崩す
・言葉を通して自分の感情をつかまえ、整理
・言葉によって浄化しなければ、感情はやみくもな怒りになり暴走
・気持ちを文学作品にまで高める。深い人間理解。味わいつくすような生き方
・潜水病:スチューデント・アパシー、無気力感
・自分をあざむきならが、清く明るく朗らかに生きる。本当のことを求めると深みにはまる
→深みにどんどん入っていき、最後まで崩れなかったのがイエス・キリスト
・太宰はパロディの名手。「お伽草子」では有名な話を解釈を変えてパロディにしている。
・昔話には今の時代につながるものがある、何かの象徴ではないか
・誰か一人でも自分を理解してくれる人がいればいい
・幸福や不幸を超えて生きる
・アンソロジー:お気に入りにものを集めたもの。自分編集の「xxベスト」
・文学は人間観を深く養う、人間理解力を鍛える
・ああ、この一瞬は美しい
<感想>
・乳、父、血々
-目次-
まえがき
1 生きる元気をもらいたいときに読む
2 社会に適応できないときに読む
3 女子の気持ちを知りたいときに読む
4 ほんとうの幸福について考えたいときに読む
5 言葉の豊かさを味わいたいときに読む
6 自分が人よりも劣っていると感じたときに読む
7 人生の美しさとはなにかを知りたいときに読む
8 愛の形について考えたいときに読む
あとがき
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