読書メモ

・「弾言 〜成功する人生とバランスシートの使い方
(小飼弾、山路達也 :著、アスペクト \1,429) : 2009.01.24

内容と感想:
 
小飼弾氏は自称プログラマ、投資家、ブロガーという方。 アルファブロガーとして影響力をもつ人である(名前だけは知っていた)。
 財務諸表の一つにバランスシート(貸借対照表)がある。 本書では人生をバランスシート(BS)を使って考えていくというユニークな試みをしている。 BSを使ってこの世界をヒト、モノ、カネの3要素に仕訳する。 BSは通常、左側が「資産」、右側が「負債」と「資本」になっている。 これを人生に置き換えると資産がカネで、負債や資本がモノとヒトになる。
 もう少しわかりやすくすると、カネはその人の総価値、総資産と言える。それを分解すると土地・建物といったモノが持つ有形の価値と、 ヒトが内面に持つ知恵やスキルといった無形の価値に分けられる。
 モノは究極的には地球資源が尽きればそれ以上増やせない。資源が有限なだけに価値はそれ以上増えないことになる。 土地も開発して広げても需要がなければ価値は上がらない(下がることすらある)。 従ってこれからは有限な資源を前提とし、自分の総価値(カネ)を伸ばしたいなら、ヒトとしての価値を伸ばしていくしかない、 というのが本書のメインテーマである。地球規模で考えているからスケールが大きい。 そのために知恵やスキルを伸ばし、コネクションを広げていこうと主張している。
 少子高齢化社会を迎えた日本で真にお金を必要としているところにお金が回っていない問題や格差問題、年金・福祉の問題に対して、 フリードマンの「ベーシック・インカム」という考え方が解決策になるとしている。 資産相続の不公平感を持つ私には相続税100%というのは分かりやすくていいと感じたが、 実際にそれを断行しようとしたら、資産家からは相当な反発が起きることは想像に難くない。 どうやって国民のコンセンサスを形成していくかが課題となる。

○印象的な言葉
・現状分析に必要なデータを集め、問題を洗い出し、対策を練る
・暮らしがキツいのは、自分がモノ扱いされているから。自分の時間を安売りしている
・会社員こそ内職を
・楽しんで学ぶ「楽習」
・カネは相互理解のためのツール。共同幻想。交換可能なものにする。複雑なものをシンプルにしてくれる。 想像力が生み出した価値(ファンタジー)をやり取り。
・自分が勝てるゲームを作る。自分が中心となったネットワークを作る。自分がハブになる
・明日を信じて約束を守る人が世の中を良くする
・会社の辞め時の基準:いい仕事をしている人が身近にいるか。技を盗みたいと思える人の存在
・日々の稽古
・バカであることが罪になった
・情報の押し売りを絶つ。情報の断食
・自分の標準状態を知る。ブログは鏡代わりになるツール
・肉体的な飢えが強さ、頭を冴えさせる。少ない金で満足できる
・経営者を従わせる方法:顧客を味方につける。
・目的(目標)を設定することは手段。目的があると過程が楽になる
・人は購買行動によって自分の意思を主張できる。金で何でも変える社会のほうが、そうでない社会より良い方向に変えやすい
・流動性の低い資産(住宅など)は質の低い資産。
・借金は自分の未来を担保に入れて、現在の自由を手に入れている。返済のために将来の選択肢が制約される
・キャッシュフローがあれば赤字でも存続できる
・他人を信用できる社会であるほど個人の利益は増える。犯罪が割りに合わなくなる
・根源的にモノを所有することはできない。人間には寿命がある。せいぜい80年レンタル。
・化石燃料以前は森の寿命が文明の寿命だった
・ほとんどの国には損益計算書はあってもバランスシートがない
・ベーシック・インカム:ミルトン・フリードマンの説。「負の所得税」。ストックになりがちなカネをフロー化し、必要な人間に行き渡らせる。
・江戸時代の日本は理想的な循環社会を築くことで環境危機を乗り越えた
・現在の温暖化対策はハイコスト・ローリターン。今やるべきは貧困対策、洪水・HIV・マラリア対策。

-目次-
あなたは、自分という会社の社長で筆頭株主
第1章 ヒト part1 ――自分の価値を「見える化」してレベルアップ
第2章 カネ ――相互理解のツールとして戦略的に使いこなす
第3章 ヒト part2 ――ネットワークにおける自分の価値をアップする
第4章 モノ ――「本当は所有できない」ということを理解する