読書メモ
・「<貧乏>のススメ」
(齋藤 孝 :著、ミシマ社 \1,500) : 2009.09.23
内容と感想:
本書は貧乏をネガティブに捉えるのではなく、貧乏を力に変える技「貧乏力」を身につけようという趣旨で書かれた。
最初、テーマに少し違和感を感じたのは、貧困状態の人は著者の想定外なのではないかと思われたこと。
確かに笑い飛ばせるくらいの貧しさなら乗り切れそうな気はするが、現在、格差と貧困が問題になっているように
絶対的な貧しさもあるのだから。
貧困は心・気持ちの問題だけで解決しようとしても、やはり限界がある。自己責任論と一緒にならないよう気を付ける必要がありそうだ。
と感じていたところ、著者も湯浅誠氏の「反貧困」はちゃんと読んでいたことが本に出てくる。
私も貧乏はイヤだし、それがイヤで頑張ってきたところは大きい。しかし今だに自分のことを貧乏性(症?)だと思う。
かつて、「清貧の思想」なる言葉が流行した。本は読んでいないが、ある意味、本書はそれに近いイメージだ。
著者も若い頃は相当お金にも苦労したという。それを乗り越えてきた「貧乏力」の実績があるからこそ説得力もある。
読めば元気が出てくることだろう。
最後は「いつも心に貧乏を」と締めくくっている。
○印象的な言葉
・消費社会から抜け出す
・お金が足りないなりに工夫する。遊び感覚。創造性
・上京力:東京で勝負する
・飢え、貪欲さ、野性
・一点豪華主義。使うべきときに使う
・心は貧しくない
・人と人のつながりがなくなったから不安
・貧乏は学びの宝庫
・実績がないときは最初はタダでやらしてもらう(ひとまず食い込む)。3回目くらいにちょっと条件を上げてもらう
・インタビューや取材を受ける。宣伝活動になる
・持たざる者の強さ
・「溜め」をつくる時期。雌伏のとき。
・人間関係が貧しくならないこと。年賀状などで報告できる関係をもつ
・「書生制度」で東京に学びやすい環境を作る。書生(学生)を一人うけいれると税制優遇。子育てが終わった家の空いた部屋を貸す。
・それでは(世間では)通用しないから、こうしたほうがいい、と言ってあげる
・お金ではなく体験の濃さを求める。体験が財産
・「論語」を持ち歩く。孔子と一緒に暮らしている気持ちになる。携帯書。血や肉、骨格にする本。
・全部失っても耐える力。裸一貫に戻ればいい
・「下流」「負け組」と人を分類する鈍感さ
-目次-
序章 貧乏を力に変える!
1 貧乏長屋のように貧乏そのものを楽しむ
2 貧乏を味わいたくない、その思いをバネに成功をめざす
第1章 貧乏は学びの宝庫
第2章 貧乏を力に変える10の技
技1 貧乏を受け入れる
技2 ちょっとした貧乏性で働きつづける
技3 体験の石油化をはかる
技4 一冊の本をバイブル化する
技5 誇りをもってプライドを捨てろ
技6 貧しても鈍しない
技7 明日はわが身と心得る
技8 人生を通してのベースをもつ
技9 かわいがられる(感情に走らない)
技10 濃い仲間をもつ
第3章 貧乏に似合うもの、似合わないもの
第4章 希望を育む「お金」の使い方
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