読書メモ

・「澤上篤人のあなたのための投信集中講義
(澤上篤人 :著、ビジネス社 \1,400) : 2009.05.11

内容と感想:
 
長期投資を軸にした投資信託「さわかみファンド」を運営する著者。 本書は投信がテーマだが、国や会社に頼らない生き方、地元住民の手による地元経済活性化など、自立意識や 自助の精神が日本再生の鍵、というのが真のテーマである。
 本書では著者の投信が運用する銘柄までは取り上げていないが、その投資スタンスはだいたいわかってくる。 いわゆるバリュー投資というやつだろう。あのバフェットとやり方はほぼ同じだと思われる。 また具体的な銘柄選びの手法も明らかにはしていない。 「どんなに景気が悪かろうと、つぶれっこない会社を買う。10年先も20年先も、 なくてはならない会社をさがせばいいだけ」と言う。 シンプルだが、それが難しいのだ。
 さて地域経済活性化については最後の第6章で提言が書かれているが、やや苦しい感が否めなかった。 地元の活性化のために、地元でお金が回り出せばいいのはよく分かるが、 それが「おらが町の投信」というファンド・オブ・ファンズの立ち上げの話に変わってしまっている。 それを「本格的な長期運用に慣れて、まずはお金の出しグセをつけ」るというのには違和感を感じてしまう。
 全編に著者の楽観的な性格が溢れていて、長期投資によって未来はよくなるのではと少しは感じさせられた。

○印象的な言葉
・米国、フランス、イタリア、ドイツの個人金融資産に占める投信の割合は10%台。日本では4%。
・長期投資はプラスサム。「育てる」。農耕民族的価値観
・長期投資はリズム。景気の大きなうねりを先取り
・日本人なら円資産の最大化
・投資家の視線が社会の質をつくる
・地方の金が地方で回り出せば良い
・日本はアメリカについで貯蓄率が低い国に成り下がった。2.8%(2005年)。貯蓄ゼロ世帯は23%(2006年)
・輸出企業は着々と生産と販売のグローバル化を進め、世界の成長の中で生きていく体制を整えた
・年金がおかしくなったのは、運用による資産の蓄積がないから。昔から安全重視で債権投資主体だった。
・本来、保険に望むものは保障だけ。生命保険は掛け捨てにし、出来るだけ掛け金を安くして、運用は分離する。
・これから銀行や保険会社から大量の資金が流出する
・SOS:アメリカの金融教育で使われる言葉。Save(貯める、節約)、Offer(提供、寄付)、Spend(使う)。
・相場は練って待て。準備を怠りなくしておけ。
・日本の投信は手数料稼ぎが最大の目的。投信に対する信頼があまりに低い。大量設計・大量解約の繰り返し。
・日本の経済成長期は何もかもがお膳立てされた時代。その間は深く考えなくてよかった。自分で考えることをしなかった。
・順位が固定化し、既得権がはびこり、ダイナミズムに欠けた世界
・10年以上の長期では株式投資が最も効率的な運用手段
・フィナンシャル・インディペンデンス:お金の心配から自由になった状態
・日本には途方もなく巨大な経済が存在しているという事実
・本格的な景気回復はこれから。不況脱出努力は続く。その間、ずっと企業の業績回復を期待できる。買いのスタンスでいける
・グローバル企業の株を持っていれば、中国・インド株など持たなくても、中国・インドなどの経済成長に乗れる
・不況の最中に買い出動することで経済の現場に金が回り、景気回復に貢献。景気が回復して株高になれば、ごほうびとして投資リターンが得られる。
・金融業界はいまだに国、税金頼み
・経営全般のスリム化。メリハリの利いた経営。不景気でも飯が食えるような体質
・投資の勉強よりも人間の勉強。人間の欲や利得計算心理
・「広く、深く、遠く」考える
・景気のうねりの各局面に応じて資産配分を切り換えていく(株→現金→債権→・・)
・地方経済圏は小さく売り上げ拡大は無理。家族企業やスモールビジネスに徹し、経営コストをトコトン下げる。地元経済の中で身の丈をわきまえて生きる。 エネルギーは商品の品質やサービス向上に向ける。地元での評価や存在感を高める。

-目次-
第1章 格好いいお金持ちになりたくありませんか
第2章 お金づくりは、あせらず、のんびりと
第3章 長期投資は、リズムと感性がたいせつ
第4章 自分でも、少しずつためしてみよう
第5章 これからは、ファンド・オブ・ファンズが活躍する
第6章 地方経済を元気にするファンド・オブ・ファンズ