読書メモ

・「一流アナリストの「7つ道具」
(ロバート・フェルドマン :著、プレジデント社 \809) : 2009.04.25

内容と感想:
 
テレビ東京の番組WBSなどでコメンテーターとしてもお馴染みの著者。 著者は序章で、今の時代には「冷静に、客観的にものごとを分析し、人に伝えるアナリスト的なスキルは、どんな仕事にも 共通して必要だ」と言う。 経済アナリストというと冷徹で、どこか評論家然としていて、創造性に欠けるようなイメージがある。 しかし本書で少しはイメージが変わった。アナリストでも創造性を発揮できると知ったからだ。 「創造的な見方(分析)」が新たな発見につながるかも知れない。 様々な角度から見て、それらの見え方を明確に説明できることがアナリストには求められると思う。
 本書ではアナリストとして要求される7つのスキルについて列挙し、それぞれを説明している。 分析力、プレゼン力、人間力、数字力、エネルギー管理力、言語力、商売力、の7つである。 アナリストの能力はこれらのスキルの複合効果で決まるという。7つのスキルの掛け算で決まるため、 どれか一つが欠けてもいけない。一つがゼロなら掛け算の結果はゼロになってしまう。 そのため苦手な科目は強化しなければいけないのだ。
 本書ではそれぞれのスキルを向上させるためのヒントが得られるだろう。 読んでみて、これらはアナリストだけに必要なスキルではなく、どれもこれからの時代のビジネスパーソンには 必要なものであることが分かる。
 ページ数こそ少ないが、易しい言葉で分かりやすく書かれているから読みやすい。

○印象的な言葉
・アナリストには掛け算が大事
・情報は量ではなく「つなぎ方」。新たな意味を見出す
・情報力よりも仮説力や分析力で戦う時代
・自分のハブ性を高める。広く世界中でやりたい仕事ができる。国境を越えた取引やコミュニケーションの中心となり、人脈と情報が集まる。 活動範囲が広がり、価値が上がる。
・英語は言語の中のハブ
・顧客が買っているものの本質は何か
・信頼の方程式 T=E+R+I/S
・分析力:中身を見抜く力。情報から意味を引き出す能力
・人間力:チームとして効果的に働く技術。会話力、交渉力、人観力
・エネルギー管理力:健康、時間、空間の管理
・良いアナリストは状況に応じて全ての分析手法を使える。手法の選択は感性や経験で判断(アートの部分)。モデル(手法)を選んだ後、分析するのはサイエンス。
・食肉生産に必要な穀物の量:牛>豚>鳥。食肉価格もこれに依存する
・意外な結論を説得力ある形で提示するには物語性と、それを裏付ける数字が必要
・プレゼン力:伝える力、説得する力
・簡潔で分かりやすい文章を書くための5つのルール
・話を印象深くするためには並列構造が効果的
・「孫子の兵法」の勝敗予測法:五計
・一つの会話の中では3つのレベルのやり取りが行なわれている。事実、それに対する自分の思いと相手の思い、品位やアイデンティティ。
・意見が対立する3つの原因:情報・解釈・損得の違い
・会話は相互理解を深めるもの、交渉は相手と合意を形成するためのもの
・交渉の4つの基本原則:人と問題を分ける、相手の利益に注目、双方の利益を見出す、進捗の評価
・交渉では挑発に乗らない。「挑発はダメ」とはっきり言う
・協調性も能力もない人には辞めてもらう方が、その人にも残る人にもプラス
・数字は露骨に示すべきではなく、品よく話す
・ビッグ・ピクチャー:自分は何をしようとしているのか。紙一枚に書き出す。混乱が解消され、精神的にも良い
・仕事の断り方:他の仕事もあるので、お引き受けしてもいい仕事はできそうもありません
・「死ぬ前にしたいこと」をリストアップすることが良い人生を送るためのコツ
・「自分が恐れていること」リストは自分の欠点を自覚し、やりたいことが見えてくる
・幸せは人生を面倒くさいと思うか、冒険と思うかによって決まる
・3つのブランド戦略:品質・低価格・サービスをブランドにする。人の場合なら「売り」となるスキルを持ち、ブランドにする

-目次-
序章 アナリストほど掛け算が大事な仕事はない
第1章 混沌から意味を引き出す「分析力」
第2章 逆算して組み立てる「プレゼン力」
第3章 意見の違いを乗り越える「人間力」
第4章 下品になってはいけない「数字力」
第5章 見落としがちな「時間・エネルギー管理力」
第6章 “ハブ性”で勝負する「言語力」
第7章 自分ブランドで差別化する「商売力」
付録 「私が読んできた本」「支えにしてきた言葉」