読書メモ
・「若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?」
(森川 友義 :著、ディスカヴァー携書 \1,000) : 2009.11.16
内容と感想:
タイトルにある4,000万円という額は、国民一人当たりに一生を通じて配分されるお金の、40歳未満の人と65歳以上の人との差のこと。
国の予算配分がそうなっているということだ。
国会議員としては投票してくれるか分からない若者より、投票してくれる高齢者に手厚く予算を当てたいと考えるもの。
若い人が選挙に行かないから政治に声が反映されない、自業自得だ、という。
本書では日本の政治の仕組みを解説。読者の政治リテラシーを向上させるために書かれた。
その上で、自分たちにできることは何なのかを考えてもらおうとしている。
著者はとにかく投票に行け、という。
若い世代の投票率がアップすることで政治家が彼らに目を向けるようになると期待されるからだ。
「メジアン有権者の定理」という、なるほどと思わせる定理が出てくる。
メジアン有権者とはイデオロギー的に中間に位置する有権者のこと。
二つの政党があった場合、どちらもほとんど同じような政策になっていくという。
政策がメジアン有権者の選好に収束するからだ。自民党と民主党の政策が似たりよったりなのは、そういう理由だと合点がいく。
となると、政党はどっちでもよい、ということになるが、国民にとって果たしてそれでよいのか?
政権交代が実現する直前(2009年5月)に出た本だが、民主党が政権をとった後の、党内の再編成の予測をしているのも興味深い。
「あとがき」にもあるように、「自己利益を追求することによって、経済・ビジネスは成り立って」おり、政治も同じ、というのが現実だ。
教科書的な「あるべき論」では政治も国民も動かない。
我々は「わがまま、という前提で見たほうが政治がわかる」というのには、これまでの政治状況からも納得できる。
○印象的な言葉
・政治により何らかの利益を得るのであれば、政治に影響を与える立場に立つ必要がある
・他力本願的に誰かが世の中をよくしてくれないかなと願うのが有権者
・合理的棄権仮説:合理的に考えられる人(頭がよく、利己的な人)ほど棄権する。自分一人くらい棄権しても全体に影響はない、と考える(→合成の誤謬?)
・合理的無知仮説:数年に1回の選挙のためにわざわざ知識を得ようとしない。そのため間違った政党や政治家を選んでいる確率が高い
(→短期間で情報を入手し、判断しなくてはいけない仕組みが間違いを生むのでは?)
・進化政治学:政治行動が先天的影響(遺伝子レベルで)を多分に受けていると考える。投票判断に影響する。
・国会議員は国益のために働いているわけではない。自分の選挙区の、支持してくれる人のために働く。
・国会議員に付く公設秘書はたった3人。これで法律を立案するのは無理。
・与党は自分のマニフェストが忠実に実行に移されているかチェックすべき
・選挙で最も重要なのは政権交代を望むかどうか
・日本もそろそろ大統領制を真剣に考えるとき。国民は首相を直接選べない。総理がコロコロと替わる。最低4年間は一人でやってもらいたい。
・米国の国会議員は半数以上が弁護士出身者。日本では少数派。日本では地方政治出身者が最も多い。
・特別利益団体(圧力団体)ができるようなテーマの政策のほうが優先される
・私たちは今日を生きるのに忙しい、それが現実
・政党助成金:議席に比例した額が政党に助成される。現状維持させるための制度ともいえる。政権交代を目指す野党には不利で、民主主義にも逆行する制度。
・国家予算案の作成は総理の優先度一番の仕事。予算を財務省主計局から内閣府に移行すべき。単年度予算から複数年度にすべき。
・中央から地方の出先機関へ出ている官僚が30万人のうち20万人もいる。二重行政。10万人は削減可能。年間12兆円の人件費をカットできる。消費税増税も不要。
・「ゆとり教育」の名のもと、人財という日本の唯一の貴重な財産を劣化させてしまった
・自分に合った仕事を求めて、世界中、どこにでも行けるような人材を育てる
・散在する知識を統合し論理的に考える力、知識を用いて相手を説得する力が不可欠
・私たちホモサピエンスは原則的に利己的である。基本的に私たちは利己的である。
<感想>
・多くの若い人が選挙で棄権するようになったのは誰のせいか?そう仕向けたのは親か、学校か、マスコミか?
・なぜ宗教団体は課税対象外なのか?
-目次-
第1章 若者は政治によって損をしている!?
第2章 主役は、「有権者」のはずだけど……
第3章 実は「国会議員」の力は弱い!?
第4章 「特別利益団体」を知らずして政治は見えない
第5章 「官僚組織」の「官僚組織」による「官僚組織」のための政治?
第6章 政治を変えるのは、あなた!
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