読書メモ

・「東大生が書いたやさしい経済の教科書
(東京大学赤門Economist:著、インデックス・コミュニケーションズ \1,500) : 2006.06.25

内容と感想:
 
「東大生が書いた教科書」シリーズ。経済についてちゃんと学んだことはないが、毎日の日経新聞のチェックは欠かせない。 しかし本当に経済の何を理解できているのか、というと自信がない。今回「やさしい」この教科書を読んで初めて、 経済の基本というもの知った気がした。遅すぎると言ってもよい。IS曲線(財・サービス市場の均衡を表す)、LM曲線(貨幣市場)を使った IS-LM分析なんてものがあることも恥ずかしながら初めて知ったし、ケインズという名前はよく聞くがどんな理論なのかも知らなかった。 日経の上っ面しか読んでいなかったことを痛感させられる。 対話形式で図表も多く、やさしく書かれてはいるが内容は高度である。
 第1章では経済の基本である「需要と供給」、GDPやお金について述べている。
 第2章ではIS-LM分析を通して現在の日本経済の状況を説明し、更にインフレとデフレにも触れている。
 第3章では為替の理解を通じて国際経済や貿易について考える。
 第4章はクイズ形式で3章までの復習になっている。
 第5章では経済学の古典派とケインズ派について説明し、両方のバランスが必要だと説いている。
 現在のデフレ日本の特殊な経済状況はIS-LM分析によって説明できる。金利を0%に下げてもそれ以上は下げられず、金融政策の効果が出ない「流動性の罠」に 陥っている。この解消のために財政政策(財政支出増大)を続けているが、そのおかげで日本は借金大国になっている。 財政赤字増大で国民の消費意欲が縮小しGDPが減少するという悪循環もある。 この世界でも初めて経験する長引くデフレを日本が克服できたら、世界は喝采をくれるだろうか?

○ポイント
・GDPは全ての財・サービスの付加価値の総額である(売り上げ高の総額ではない)。土地や中古品の売買はGDPに含まれない(手数料は計上される)。 日本はGDPでは世界2位だが、国民が感じる経済的豊かさを正確に反映しているとは言えない?
・経済発展のためには技術革新(生産効率の上昇)が必要
・日銀のマネーサプライのコントロール:公定歩合の調整、公開市場オペレーション、準備率の調整
・マクロ経済政策:財政政策、金融政策
・発展途上国や新興工業国は固定為替相場制を採用している国が多い。固定相場にもメリット、デメリットがある
・東京為替市場では年間約4000兆円の取引がされる。日本の貿易量は100兆円に過ぎない。貿易よりも国際的な資金移動が膨大。
・比較優位:貿易により貿易する前よりもどの国もハッピーになれる
・日本全体の利益の総和を見れば貿易自由化が最善。長期的にもプラス
・インフレターゲット政策:日銀が断固たる決意を表明することでインフレ率を上げようとする人間の心理を突いた政策。予想で現実の経済を動かそうとするもの
・中国は世界にデフレを輸出している?
・古典派:アダム・スミス。自由放任主義。市場に任せる。政府などの関与は不要。完全雇用。好況期に有効な長期モデル。
・ケインズ派:政府の関与が必要。GDPや失業率をコントロールできる。不況期に有効な短期モデル。

-目次-
第1章 経済の「きほん」
第2章 分析の「きほん」
第3章 国際経済の「きほん」
第4章 経済学の館
第5章 古典派&ケインズ派