読書メモ

・「信州 雪形ウォッチング
(近田信俊:写真・文、信濃毎日新聞社 \1,600) : 2004.09.18

内容と感想:
 
雪形とは雪解けの季節に残雪が描き出す模様のこと。この自然の造形を雪国の人々は古くから観察し、名前を付け、農耕の時期を知る目安として利用してきた。本書は題に信州が付くように、信州の山で見られる雪形を集めた本であるが、同じように日本各地に雪形を暦替わりに利用する先人の知恵が残っているようである。雪形がそのまま山の名前になっているものも多い。有名なのは白馬岳(しろうまだけ)。本当は”白い馬”ではなく、黒く見える”代馬”(しろうま)なのだが、いつしか白馬と当て字されるようになった。同じく馬の雪形から名づけられた山として多いのが駒ヶ岳。山好きの自分としては、そういった山名の由来は聞いたことがあったが、実際に意識して雪形を見たことはなかった。また、信州にこんなに多くの雪形があったことを初めて知った。
 雪形は季節ものであるから、美しく見える時期が限られている。また観る場所によっても形が異なる。中には天候によって見えない年もあると言う。本書で紹介されている雪形の中には形が明瞭でなく、著者自身も首を傾げるようなものもあるが、古くからの伝承物でもあり尊重して取り上げているものがある。
 そういう雪形は誰が名付けたというものでもなく、代々語り継がれてきたもの。昔の人たちの想像力、自由な発想から生まれたものである。著者も言っているように「自分だけの雪形を探すのも楽しい」だろう。山に登らなくても誰もが楽しめるのがいい。

-目次-
・雪形とは?
・北アルプスの雪形
・中央アルプスの雪形
・雪形のある風景
・雪形コラム

更新日: 04/09/19