読書メモ

・「ナンバ走り 〜古武術の動きを実践する
(矢野龍彦・金田伸夫・織田淳太郎:著、光文社新書 \700) : 2004.07.31

内容と感想:
 
矢野、金田両氏は桐朋高校バスケットボール部のコーチ、部長であり、同部をインターハイにも導いた優れた指導者である。どこが優れているかというのが、本書の肝である。両氏はバスケに古武術を取り入れた。そのきっかけは甲野氏との出会いである。桐朋バスケ部の話は甲野氏の著書でも知っていたが、その具体的な実践内容が書かれている。写真や図も豊富で理解を助けてくれる。古武術をスポーツに取り入れると言っても、想像もつかないと思うが、図説してもらえれば一目瞭然。応用は何もバスケに限ったことではなく、野球や陸上、ボクシングなどにも及ぶ。単に立ったり、座ったりすることにも応用が利く。
 本書を読んで目から鱗が落ちる思いがするのは、如何に我々が西洋から取り入れた従来のスポーツ(および、トレーニング)の常識にとらわれてきたか、ということである。冒頭に書かれているように今は、既に古武術ブームだそうだ。古武術のよさを取り入れる動きがスポーツ界に徐々に広がっているようだ。
 本書の題にもある「ナンバ」は私も以前から一番興味のあったものだが、詳細は第二章で述べられている。アテネ五輪でも活躍が期待されている陸上の末続選手の走法の秘密についても書かれている。
 第三章の長島茂雄のフルチン打法の解説には仰天した、と同時に思わず吹き出した。
 甲野氏の著書で書かれていた発想がより具体化されて表現されているので、我々素人でもイメージしやすくなったと思う。

-目次-
第一章 投げる
第二章 走る
第三章 打つ
第四章 殴る、抜く
第五章 あたる、とる、ターンする
第六章 跳ぶ
第七章 立つ、座る
終章 根性主義と古武術

<ポイント>
・筋トレだけではダメ。骨の動きに筋肉をついていかせる。
・省エネ(スタミナの持続)、気配を消す
・膝を抜く、重力を生かす
・井桁潰し、肋骨潰し
・反動を付けない
・根性主義の先に効率的な身体運用法への模索が自らの体の中に生まれてくる。

更新日: 04/08/16