読書メモ

・「井沢元彦の未来講座 〜言霊社会とサイエンス
(井沢元彦:著、徳間書店 \1,600) : 2004.08.29

内容と感想:
 
”言霊”の著者だが、本書の内容は言霊には全く無関係。どうして副題に言霊の文字が入っているのか疑問。
 1998年9月から2000年12月にわたり、週刊文春に掲載された対談集である。著者の対談相手は皆、科学技術の最先端で活躍する方々である。恥ずかしながら名前を知っているのは慶応大学の村井純先生くらいだったが、私の専門外の分野の話しがほとんどで非常に興味深かった。いきなりそれぞれの専門分野を学ぼうと思っても敷居が高いと思ってしまうが、こういう対談の形であれば、素人が聴きたいと思われることだけを、代わりに井沢氏が質問してくれるので、とっつき易い。理解としては浅いかも知れないが、問題意識や興味を引き出してくれる。
 私が一番興味深く読んだのは脳死の問題である。脳死状態でも人工呼吸器で肺を動かしてやれば心臓も吊られて動くらしい。意識がなくても生命体としては機能するのだ。驚く話しはまだある。脳死状態の妊婦が出産するという症例もあったそうである。臓器移植の問題も難しい。いろいろ考えさせられた。

-目次-
第一章 聴け、宇宙のつぶやきを
第二章 科学は何色の花を咲かせるか
第三章 遊びをせんとや生まれけむ
第四章 生命の海に帆をかかげて

<ポイント>
・農業は人類最初の環境破壊である
・アミノ酸ひとつを星とすると、蛋白質全体が銀河に匹敵する
・リサイクルが経済的、環境的に絶対に善とは言い切れない
・地球に生命が誕生したのは幸運な偶然の重ね合わせだった
・インターネットは地球全体規模でいつでもタッチできる空間である
・テクノロジー開発では50年後、100年後の副作用を予測していく必要がある
・遺伝子を調べれば将来発症しそうな病気が分かるといい、それによる差別・偏見などが懸念されているが、実はほとんどの人が遺伝病の予備軍ということになり逆に偏見がなくなるかもしれない
・ある程度のストレスがないと生物は抵抗力をつけることが出来ない
・人間としての脳の本質的な機能は同時並列的に起こっている情報処理の中から、意識に受け渡すべき重要な情報のみを選んで渡すことである

更新日: 04/09/07