読書メモ

・「交流分析のすすめ 〜人間関係に悩むあなたへ
(杉田峰康:著、\1,400、日本文化科学社) : 2004.02.25

内容と感想:
 
交流分析(トランザクショナル・アナリシス: TA)という言葉を知ったのは、カウンセリング関連の本を読み出してからすぐのことであったが、具体的に何をするものかを知らずに来た。交流という文字が示すように人間との間の交流、人間関係が原因でストレスや悩みを抱え、苦しむ人のための支援、治療のための分析である。学校や職場、家庭でのコミュニケーション不全が原因で心の病に罹る人が多いという。私自身も人間関係とは難しいものだと常々感じていることであるが、本書の交流分析の目指すゴールははしがきに書かれているように、「相手を変えるよりも、まず自分に気づき、自分を帰ることが先決」で、(感性と知性との間に)「できるだけ自然で、開放的なコミュニケーションを回復すること」だという。「テクノロジー中心の知性偏重の行き方から、一時離れて感性に耳を傾けて」、という言葉が印象的。
 本書には交流分析で用いられるエゴグラムという図が出てくる。チェックリストから作成したこの図から自分の心の状態を知ることが出来る。実は以前、会社でメンタルヘルスの先生のカウンセリングを受けたときに、初めてエゴグラムを知り、面白い心理テストだと思った。
 一人の人間には親、大人、子供の三つの心(人格)を持つ「三つの私」がいる。更に厳格な親の心(CP)、やさしい親の心(NP)、理性的な大人の心(A)、自由な子供の心(FC)、自分を抑える子供の心(AC)の5つに分け、それぞれのレベルの高さをエゴグラムに書き込むことで、そのグラフの形から自我状態が分かる。本書で1年以上ぶりにエゴグラムを作成してみたが、以前の形と変わったことに驚いた。人間の心は年月とともに変わるようだ。自分の場合、AとFCの逆転が起こっていた(詳細な分析は省く)。
 交流分析は心理テストだけで終りではない。人間関係改善のため、エゴグラムをベースに以下の4つのステップを踏む。構造分析、交流パターン分析、ゲーム分析、脚本分析である。ぱっと見、よく分からないが内容は難しいものではない。非生産的な交流パターンをゲームと呼び、これを常に繰り返すことで悪循環に陥るのが、問題の原因の一つである。また幼児期に作られた性格の基本的な仕組みを脚本と呼び、これが成長後の人生に大きく影響するという。これらが自分の性格をどう歪めているのかを知り、「それからの解放に努力すれば、人生を統御のもとにおくことができる」のだという。性格は幼児期にある程度決まってしまう、といわれる反面、うまくコントロールすることで、自分の性格は半ば宿命と諦めていても、改善は可能だと言っている。これが交流分析の効能である。

-目次-
第一章 三つの私 - 交流分析入門
第二章 三つの私
第三章 エゴグラム - あなたの心の偏り
第四章 コミュニケーションを分析する
第五章 愛は貯金できる - ストロークについて
第六章 くり返す人生ゲーム - 人生ゲームの分析
第七章 あなたの人生ドラマに筋書きがある - 脚本分析

更新日: 04/02/02