読書メモ

・「風の帰る場所 〜ナウシカから千尋までの軌跡
(宮崎駿:著、rockin'on \1,600) : 2004.08.07

内容と感想:
 
著者が宮崎駿となっているが、1990年から2001にかけて、渋谷陽一が宮崎駿にインタビューした記録を5本集めた本である。宮崎駿は言わずと知れた日本、いや世界を代表するアニメーター。現在、最も影響力のある表現者の一人であろう。しかしそれ以上にかつて私が影響を受けたのはインタビューする側の渋谷氏の方である。学生時代にいろんな音楽を聴いたが、その音楽的嗜好に影響を及ぼしたのが、夜のNHK-FMでDJをやっていた頃の渋谷氏であった。それ以前も洋楽は聴いていたが、ヒットチャートを賑わす商業主義的な音楽以外にも、よい音楽があることを知った。ミーハーな雑誌「ミュージックライフ」から「rockin'on」に乗り換えたのも彼の影響である。その渋谷氏とも随分ご無沙汰だったのだが、彼が宮崎アニメ・ファンであったことは意外であった。辛口の渋谷がどんなインタビュ−をするのか興味があった。
 さて、宮崎氏の作品は数多いが、これまで私が意識して観ているのは「ナウシカ」、「紅の豚」、「もののけ」くらいだろう。ハイジやコナンにも彼が関わっていたことを知ったのはずっと後のこと。彼の喋っているのは何かのTV番組の中で見たことがある(多分、「もののけ」公開前の宣伝用の番組だろう)。今となってみればそれは本書の中で喋っていることとは全く次元の異なる、子供向けの発言だったと思う。宮崎氏の思想、アニメへの取り組み、アニメ業界の裏話など彼の本音がたっぷりで面白い。
 本書の一番最初のインタビューでの肖像写真を観ると、髪の毛も黒いし、ひげも生やしていない。今とはだいぶ印象が異なるが、インタビューを読む限りでは、年を経てもアニメに取り組む姿勢はぶれていないな、と感じた。
 まだ「千と千尋」は観ていないのだが、こういう本を読むと、すぐ影響されて観たくなるんだな。

-目次-
・風が吹き始めた場所(1990/11)
・豚が人間に戻るまで(1992/7)
・タタラ場で生きることを決意したとき(1997/7)
・ナウシカと千尋をつなぐもの(2001/7)
・風の谷から油屋まで(2001/11)

更新日: 04/08/16