読書メモ

・「プログラマの「本懐」 〜アーキテクトという選択
(山本啓二:著、日経BP社 \1,800) : 2004.12.23

内容と感想:
 
日経ソフトウエア誌で連載された内容をまとめた書。帯には「技術を極めたっていいんじゃないか。味わいたいのはモノづくりの面白さと醍醐味ではありませんか?」と書かれている。まったく同感である。それだけに期待して読んだのだが、期待が大き過ぎただけに、読後はやや不満が残る。
 この業界の人は技術者として入社しても、年月とともに管理職へいかざるを得ない状況になる。プロジェクトマネージャといっても単なる要員管理や調整役のような立場となり、技術からは離れていく。確かに管理者も必要なのだが、人それぞれに選択できる道(キャリアパス)が必要である。自分は技術で食っていくんだ、という人も万年プログラマというわけにはいかないのが現実。居場所はなくなるのかと不安にもなるだろう。けっこう同じ悩みを持つエンジニアは多いのではないか?自分の将来像をうまく描けないと。個人的には技術者の誇りが持てて、やりがいが実感でき、それなりの給料がもらえるのであれば、この仕事を続けていけるだろうと感じている。当然、そう思えるよう自分でも努力し続けなければならないし、人にも認められるようにならなければいけない。
 アーキテクトというのは何か新しい、特別な職種などではない。これまではそういう呼び方をしてこなかっただけで、開発リーダーとか主任設計者のような立場に当たる。それをより明確に定義し直したのがアーキテクトである。れっきとした技術者であり、どちらかといえばその活動範囲は、より上流工程が主になるがその役割は広範囲に及ぶという。アーキテクトのミッションとはシステムの「アーキテクチャを設計し、それをシステム開発の全体に行き渡らせること」である。視点をより高い位置に置き、システム開発全体に目を行き届かせなければならない。本書ではJavaを使ったビジネスアプリケーション開発プロジェクトを例にしている。物語風に書かれていて、要件定義から始まって、設計・実装、テストまでの様々なプロセスにおいてアーキテクトがどのような役割を演じるのかがよく分かる。5章では「トラブルプロジェクトをレスキューする」なんというシーンも出てくる。これはなかなかシンドそうな場面であった。
 読めばアーキテクトとはこんなものだというイメージが掴めるだろう。9章では「大工の棟梁」に近いとも言っている。大事なのは「技術を極める」といっても技術に片寄っていてはダメで、「技術者とビジネス側の人たち(ユーザ)が連携するためのコーディネーター」となるべきだと。プロジェクトの規模によって、それに関わる人の立場も変わってくるだろうし、皆が皆、アーキテクトというプロジェクトもありえないだろう。きっと規模に応じてアーキテクトの仕事も分担する必要があるのだろう。

-目次-
1 「モノづくりのプロ」の次のステップ
2 アーキテクトとして要件定義に加わる
3 アーキテクチャを設計する
4 フレームワークを用意する
5 トラブルプロジェクトをレスキューする
6 もっとテストを楽しむ
7 開発現場以外で活躍する
8 アジャイルプロジェクトのアーキテクト
9 アーキテクトになりたい!

更新日: 05/01/04