読書メモ

・「発想名人
(齋藤孝:著、文藝春秋 \1,000) : 2004.12.26

内容と感想:
 
週刊文春に連載されていたエッセイをまとめたもの。
 本の題名と内容は特に一致しているとは思えない。著者の著作量の多さを見れば、彼自身が題にあるような「発想名人」であることはよく分かる。その発想の出し方のようなノウハウを本書に求めると(題名だけ見れば多分、普通はそれを求めるだろうが)裏切られる。
 本書では著者が連載中に興味を持ったものや経験、自身の研究テーマ、等を面白可笑しく書き綴っている。彼の一連の著作にも登場するテーマも当然、出てくるのだが、それらを限られたページ数でうまく要約し、味付けして、週刊誌という媒体で気楽に読めるようにしている。
 著者が私と世代が近いこともあって、いろいろ共感することが多いのだが、本書でも親しみが湧く事柄が話題になっていた。足の指を扇のように広げられるとか、かまいたちの経験とか。特に何かの役に立つというわけではないことだが・・。その他では現在の時代認識でも共感する部分もあり、同じことを感じている人がいることを知るだけでもほっとさせられる。特に感慨深いのは日本の子供たちの将来について。現在、仕事もせず、学校にもいかないニートと呼ばれる若者が急増しているらしい。ちゃんと学校を卒業しても就職口がない。雇用不足では将来に希望を持ちにくくなり、真面目に勉強しようとも思わなくなる。これは国全体の損失だし、将来ますます少子高齢化して、日本という国が立ち行かなくなるかもしれない。それを憂いている。この対処案として著者が提案しているのは、サラリーマンが会社に所属しながら起業できるシステム作り。会社を辞めて起業するのはリスクが多いため、なかなか日本では起業が増えない。従って雇用も増えない。ある程度、給与を保証しながら、勤務時間を割いて、別の会社を興して仕事が出来るようにしよう、というものだ。悪くないのではないだろうか。一企業の努力だけでは弱いから国を挙げて支援するシステムにすれば雇用創出の点でも効果が上がると期待でき、私は賛成である。

更新日: 05/01/04