読書メモ

・「「できる人」はどこがちがうのか
(齋藤孝:著、\700、ちくま新書) : 2004.02.13

内容と感想:
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・三つの力 - まねる(盗む)力、段取り力、コメント力(要約力、質問力)
・憧れ、身体感覚、技化、スタイル(型)

 ここでいう「できる人」とは達人や、その道を極めた人と取ってよい。そういった人はどのように技を磨き、上達の秘訣を掴んだのだろうか、というのがテーマ。スポーツや芸事、仕事などにはコツがある。これを掴むが掴めないかでその後の人生は変わってくる。ずっと出来なかったことが鍛錬や工夫を重ねるうちに、ある日突然出来るようになった。これをコツを掴んだというなら、それを掴んだときの喜びは大きい。大袈裟にいえば開眼したとか、境地に達したとか、悟ったとか表現される。自分が別の次元に入り込んだかのようでもある。その体験がその後の人生の大きな支えとなり、勇気の源となる。
 著者は上達の秘訣にはそれぞれの道に何か普遍的なものがあると感じて、本書の執筆に至っている。そういう普遍的なものを応用できれば、違った領域(対象)にもチャレンジできると言う。
 上達するためには上達したいという意識がまず大切だ。誰か目標、憧れとなる存在も大きい。ある水準まで行って努力を止めれば上達したとはいえない。そのレベルを上達したというのは思い上がりである。先達から直接、指導を受けられる場合は上達も早い。受けられない場合でも何とかして技を盗みたいと観察し研究する。しかし完全なコピーは無理であり、技の移植にはその人なりのアレンジが必要になってくる。
 上達の意識の根源でる憧れや感動がない場合はどうするか?若い内にいきなり最高級のものに出会わせる、のが教育の王道である。
 技の習得のプロセスで繰り返される練習。量が質に転化する瞬間を見逃さないことが大切。これがコツを掴む瞬間であり、その瞬間に至るまでには集中力の持続が必要。集中力の持続に有効なのがリズム。呼吸も大事で、常に脳を活性化させておかねばならない。

-目次-
第一章 子どもに伝える<三つの力>
第二章 スポーツが脳をきたえる
第三章 ”あこがれ”にあこがれる
第四章 「徒然草」は上達論の基本書である
第五章 身体感覚を<技化>する
第六章 村上春樹のスタイルづくり

<ポイント>
・一芸に秀でた人は、みな何か重要な共通の認識を持っている
・上達を根底から支えるのは、「あこがれ」である
・上達の秘訣は、集中力の持続にある
・呼吸法こそ諸活動を束ねる核であり、上達の秘訣中の秘訣である

更新日: 04/02/14