読書メモ

・「戦国歴史舞台を歩く
(池宮彰一郎:著、毎日ムック \1,500) : 2004.09.05

内容と感想:
 
作家・池宮氏が戦国時代を描いた小説の舞台ともなっている史跡を訪ねた紀行。写真も多くそれだけでも楽しめるが、その土地の名物・名産なども紹介されているのもご愛嬌。常々、暇があったら史跡巡りもしてみたいと思っているが、本書はその好いガイドとなる。
 もともと映画の脚本家だった池宮氏が、小説を書き始めたのはなんと68歳になってから。戦国三部作といわれる「島津奔る」「遁げろ家康」「本能寺」を執筆している。まだいずれの作品も読んでいないのだが(今のところ「島津奔る」だけは積ん読状態である)、この本で訪れた場所は目次にもあるように、戦国時代に最も激しい争乱の繰り広げられたところである。
 本書の後半では対談や講演録も収められいるのだが、興味深いのは小泉首相(2001年就任)が総理になる前の「小説すばる」2000年6月号のでの対談である。その中で小泉さんは歴史小説好きであることを告白している。歌舞伎の忠臣蔵も好きだそうで、そういえば新聞かニュースで観劇に行った様子などを報道しているのを見たことがある。対談では首相からはこれといった発言はなかったが、最近はパフォーマンスだけが目立って、肝心の国政での成果が見えないのだが・・。

-目次-
・美濃
・近江
・三河・尾張・遠江
・越前
・京
・池宮彰一郎が語る日本 -対談・講演録集

<ポイント>
・700年余りも続いた島津家には正史がない。島津の分かりにくさ、得体の知れなさ。
・信長の傾(かぶ)いた美意識
・氏の創作の裏に壮絶な戦争体験あり
・信長の比叡山焼き討ちや一向宗門徒の大虐殺からは、必ずしも彼が宗教否定論者であると言えない
・家臣団あっての家康
・司馬文学に裂け目を見つけないと日本の歴史文学は止まってしまう
・「運」は国にもある
・悪人を書ける作家が少ない
・信長は古代ローマの政治体制(統領制、共和制)を目指していた
・信長の理想に応えられるまでには日本は成熟していなかった
・検察、司法、治安警察などが、権威権力を失ったとき世の中は乱れる
・日本人よ、危機感を持て

更新日: 04/09/07