読書メモ

・「いま『武士道』を読む 〜21世紀の日本人へ
(志村史夫:著、\780、丸善ライブラリー) : 2004.03.21

内容と感想:
 
現在公開中でトム・クルーズ主演のハリウッド映画「ラスト・サムライ」が話題になっている。江戸末期の日本が舞台で、脇役の渡辺謙の演技も評価を得ているらしい(私はまだ見ていない)。これに合わせたように新渡戸稲造が100年も前に英語で著した『武士道』が再び注目されているようである。新渡戸稲造の名は五千円札の肖像で知られるが、『武士道』を書いた人、しかも原著は英語だったということを知る人はどれくらいだろう?稲造は南部藩士の三男として生まれたサムライの子であった。6歳のとき明治に改元している。面白いのは17歳でキリスト教徒になっていること、英語を学び、アメリカにも渡ったこと。
 本書は原著ではなく、その解説書ともいうべきものである。階級としての武士は明治維新で消滅した。しかしその精神(武士道)は明治以降も生き続けていたと著者は見ているが、戦後完全に消滅し、サムライ的な日本人も絶滅したと嘆く。志村氏が本書を記そうとしたのも、「物質文明に酔い痴れる(現代)日本人の退廃の度合い」の著しさを感じているからに他ならない。礼節を失った、廉恥心を失ったと嘆く。それもこれも戦後教育、特に道徳教育に問題があったと氏は言う。
 武士道とは一言で言えば、「サムライがその職業において、また日常生活において守るべき道、道徳的原理の掟、すなわち武人階級の身分に伴う義務を規定した”不文律”」である。成文法ではないから武士道とはなんぞや?と明確に記したものはなかった。武士道というくらいだから武士階級のものなのだが、それを過去の封建社会の一階層の中の掟として葬り去ることに寂しさを感じる点は理解できる。現代日本人の私でも歴史小説や時代劇等で感じてきた武士の美意識のようなものは大事にしたいと考えている。

-目次-
1 序
2 『武士道』を読む
3 21世紀の日本人へ

 武士道は儒教(朱子学)の影響が大きいが、江戸時代よりもはるか以前からある神道や仏教の思想もこれを支えている。
 志村氏が武士の末裔かどうかは知らないが、「武士道」には全面的に肯定的である。ちょっと鼻に突く物言いも「日本の現状と将来を憂える」気持ちの強さの現われと好意的に受け止めておこう。頻繁に脱線するのもご愛嬌。しかし氏は日本人を再び総じて武士にしたいと言っているわけではない。武士だけで国が成り立つはずもない。氏が求めているのは真に日本を救う政治家、「私的利害を離れ、国家に対する全身全霊の使命感を持った」サムライである。戦後以来の転換期とも言われる現在。現代にサムライは甦るか?。

更新日: 04/03/27