読書メモ

・「仏教が好き!
(河合隼雄、中沢新一:著、朝日新聞社 \1,400) : 2004.06.26

内容と感想:
 
何ともミーハーな響きの題名の書であるが、河合隼雄が宗教学者であり仏教徒である中沢新一と仏教をテーマに語り合った対談集。「はじめに」で書いているように、河合氏は心理療法家として心の悩みをなんとか「科学的」に解決したいと努力してきたが、簡単に「科学的」には解決できないと考えるようになり、次第に仏教に関心を持つようになったそうである。また、このようにも書いている。日本は(全体として)「宗教に無関心の人の多い世界的にも特異な国」だと。しかし、「これは別に日本人の宗教性の薄さに結びつくものではなく、半意識的な宗教心が、日本人をうまく守ってきたとも言える」と。言いえて妙だと思うし、日本人って何か中途半端な国民だなとも思ってしまう。外国人から見た日本人の不可解さの要因の一つかも知れない。別の見方をすれば、そういう宗教心のあり方もあるのかも知れないし・・。
 私が仏教に興味を持ったのも、何か自分の中で整理されていないモヤモヤへの解答のヒントを与えてくれそうな期待があるためだが、体系的に学んでいるわけではないし、そんな時間もない。ついつい無作為に興味のある、読みやすそうなこの手の本を手にすることになる。しかし対談集といって、決して内容は易しくはない。分かったようで分からないようで・・。しかし、現代のグローバルな社会におけるお二人の仏教への期待が大きいことが伝わってくる。

-目次-
・仏教への帰還
・ブッダと長生き
・仏教と性の悩み
・仏教と「違うんです!」
・幸福の黄色い袈裟
・大日如来の吐息 - 科学について

<ポイント、キーワード>
・メタ宗教、宗教の原型、宗教思想の核、普遍的な宗教能力
・どの宗教でも単独では実現できなかった宗教の夢
・全地球的神話にいちばん近い
・イスラム教の人々とプロテスタントの米国との激突。どちらも思想のかたち、ものの考え方が似ている似たもの同士ともいえる
・イエスは若くして刑死したため、キリスト教は若い思想。ブッダは長生きしたから老人的な思想も入っている。歴史も浅いプロテスタントの米国が問題を起こすのは「純粋好みの青年期」にあるからかも知れない
・仏教が一番心理学に近い。真理を自分の外に作らないから
・仏教は近代科学と一神教の両方の限界を超えている
・狩猟文化。猟師は個人主義
・仏教は否定を原動力に進む運動。親鸞の場合、否定を捨てることで単なる肯定を超えた
・「仏」の概念、理解の共通性は実は日本人には行き渡っている。それほど仏教が浸透しているともいえる
・仏教に幸福という文字は無い。近い言葉は「楽」
・貨幣と神は似ている。しかし貨幣は幸福をもたらさない
・無自性。本来「私」などはない。「私」は全てのものとの関係の総和によって規定される。「個」の前に関係が「存在」している
・常識を粉砕し、権力をものともしない批判力。たましいを根源的に癒す力。

更新日: 04/06/29