読書メモ

・「理想の国語教科書 [赤版]
(齋藤孝:著、 \1,238、文藝春秋) : 2003.11.29

内容と感想:
 
既に同名の「理想の国語教科書」が発刊されていることは本書を読んで初めて知った。編集方針は前書とは変わらないそうである。著者が理想とする日本語の「教科書」とは?。
 カバーにも書かれているように「小学三年生からの全世代に贈りたい。こころが豊かになる最高の日本語」を味わって欲しいと著者は考えて本書を編んだ。
 我々が学生の頃読んだ教科書は、楽しめるものではなかった。授業に取り組む姿勢に問題があったことが、国語を楽しめなかった原因であると思われるが、今のように自分から読みたいと思えなければ、そもそも教科書なんて楽しめるものではない。
 本書は教科書といっても、小難しい文法や専門的なものは全くなく、兎に角、楽しく読め、質の高い文章を多く集めてある。本文は大きなフォントで、全てにルビが振られていて、朗読することを想定した作りになっている。
 構成は大きく一学期から三学期までに分かれていて、日本人の作家だけでなく、外国の作家らの作品の翻訳も半分を占める。これは世界的にも認められている教養を身につけて欲しいという著者の考えらしい。
 また、全24作からの抜粋をただ並べているだけではなく、あら筋が分かるように、各作品の本文の先頭には簡単な「前口上」が付けられ、終りには「解説」と本文の「要約」が付けられていて、ここら辺りは教科書っぽい。
 恥ずかしながら本書で取り上げられた作品のうち、全文を読んでいるのは漱石の「坊ちゃん」くらい。これまで如何に本を読んで来なかったかが知れてしまう。全部の作品を読破するのは時間もなくて、大変なことである。本書を名作ダイジェスト集と捉えれば、全部読んだ気になれるかも知れない。著者による解説も面白い。カバーにも書かれている、各作品に対する一行コピーも良い。昔、途中で読むのを挫折したドストエフスキーの「罪と罰」だって、著者の解説を読めば、また読んでみようかと思わせるほど。
 こういう教科書と学生の頃に出会っていたら、もっと文学作品をたくさん読んだかも知れないが、今となっては後の祭り。英語、英語と最近では子供の時期からの英語教育を叫んだりする輩もいるようだが、まず正しい日本語を身に付けて欲しいと私が思うのは、英語が苦手なおじさんの負け惜しみにしか聞こえないか?気がつけば3学期分を一気に読み終えてしまった。

更新日: 03/11/29