読書メモ

・「縦走路
(新田次郎:著、 \400、新潮文庫) : 2003.01.25

内容と感想:
 
山男の蜂屋と木暮は夏の北アルプスで、単独行をする美貌の女性・千穂に出会う。勿論、彼らは神聖な山中では彼女にちょっかいを出すこともなく、それどころか暗黙の内に彼女の警護役になっていた。自然に千穂がリーダーになり、無意識にパーティを組んでいた。信州から針ノ木峠を越えて、立山に出て、富山に至るルートを踏破した後、彼女の住所も聞かずに別れたが、その後、妙なめぐり合わせで3人は東京で再会することになる。蜂屋の同僚である美根子が千穂と同級であった(といっても昔から美根子は千穂に激しい対抗心を秘めていた)。そして4人は互いを意識し始め、不思議な四角関係になっていく。と言ってもただの恋愛小説に終わらないところが新田次郎である。舞台が東京に移っても物語は山を中心に展開する。
 二人は互いが千穂に興味があることが分かっていたため、牽制し合う。そういう気持ちとは別に蜂屋は、北アでの千穂の行動に不満を持ち、もう一度山で彼女をぎゃふんと言わせてやりたいと思っていた。そして冬の八ヶ岳に二人で挑もうと千穂を誘う。その冬の前にひょんなことで蜂屋は美根子と奥多摩に出掛けることになり、彼の千穂への気持ちを知っている美根子は彼を罠に掛ける(蜂屋の会社の社長と彼女は不倫関係があり、彼も知っていた)。一方、木暮は同じ時期に千穂を奥多摩に誘っていたが、特に事態に進展はなかった。ただ、冬の八ヶ岳計画が近づくと、男達は千穂を意識しないわけがない。千穂は二人から特注の登山靴をプレゼントされる。最初は木暮が単独で贈るつもりでいたが、それを知った蜂屋と争いになりそうなのを千穂が察知して、二人から片方づつ寄贈された形にした。
 蜂屋と千穂の冬の八ヶ岳への出発の電車を木暮と美根子が見送りに来る。その帰り、美根子は木暮をも罠に掛けようとするが、交わされる。
 冬の八ヶ岳縦走は厳しいものとなった。初めての冬山だという千穂をサポートして蜂屋がリードする。吹雪の中で身動き出来なくなった石室の中で、千穂は凍死するのではという恐怖に襲われる。吹雪が晴れて下山中、二人の前に、出発前の宣言通りに木暮が迎えに来た。この山行で千穂は二人の男に自分への愛情をはっきりと感じた。
 男二人はある日、千穂を誘い出して、同時に告白するという変てこな行動に出た。誘った場所もあって彼女は不快に感じた。特に返事もしなかった。
 その後、3人は北岳へ岩登りに出掛ける。その絶壁を制した直後、二人の男は黙って、先の告白に対する彼女の返事を待っていた。出発前に美根子が千穂に差し入れたものが3人の目の前で明らかになる。それは3人の恋愛感情を霧散させる”爆弾”であった。

更新日: 03/01/29