読書メモ

・「逆説の日本史1 古代黎明編
(井沢元彦:著、 \1,600、小学館) : 2003.04.19

内容と感想:
 
購入後、読まずに積んでおき、転居の際に行方知れずとなっていた本書をやっと見つけ出した。
 日本の古代というと縄文、弥生の原始的な生活と古事記の神話のイメージが重なって、日本史と言える時代であったかどうかも、はっきりしないのが私の印象である。
 日本を表す漢字に「倭」がある。これはどうやら良い意味ではないらしい。これと同じ発音
をするのが「和」。古代政権「大和」にも「和」が含まれているように(読みは”やまと”だが)、初めは”わ”と発音するものが日本国を表していたのではないか、というのが一般的である。
 「環」も”わ”と読むが古代日本人は、”環”濠集落で生活していたので、古代の人々は自分の生活の場を環と呼んでいたのが始まりだろうと言う。現在のように統一国家でない時代には”国”という概念もなかったと思われるから納得できる見方ではある。
 しかし「環」と「和」の間には関係はない。偶然の一致であろう。でも「和」の方が日本の長い歴史を見ると日本人の気質を表す重要な漢字と言える。聖徳太子の十七条憲法の第一条「和をもって貴しとなす」が端的にこれを示している。「和」とは「話し合い至上主義」である。これにはどんな宗教も勝てないと著者は言う。これは現代の永田町政治まで続く伝統である。
 著者がよく言う「怨霊」(御霊)信仰とは「臨在感」である。死んだ人の骨などになんらかの存在を感じる、ということである。
 本書で最も興味深いのは「天照大神=卑弥呼」説である。邪馬台国論争にも独自の見方を示してもいる。ここにも「怨霊」が絡んでくるのだが、史料だけに頼らない推理に説得力を感じる。

序論 日本の歴史学の三大欠陥
第一章 古代日本列島人編 
第二章 大国主命編
第三章 卑弥呼編
第四章 神功皇后編
第五章 天皇陵と朝鮮半島編

その他、メモ:
・古事記に「国譲り」の話がある。幕末の大政奉還も「国譲り」といえる。
・加賀百万石とかいう”石”という単位が人が一年で食べる米の量を表すとか、陰暦の効用とか日本史以外でも初めて教わることもあった。
・古天文学が解明した皆既日食と卑弥呼失脚の関係
・天皇家が万世一系だということへの疑問と、三王朝交代説
・天皇陵は立入禁止で調査も禁止だという事実。

更新日: 03/04/19