読書メモ

・「早わかり世界史
 〜 時代の流れが図解でわかる!
宮崎正勝:著、 \1,400、日本実業出版社 : 2002.01.31

内容と感想:
 
目次
序章:世界の歴史の始まり
第一章:最初に生まれた四つの世界
第二章:一体化するユーラシア世界
第三章:大航海時代と膨張するヨーロッパ
第四章:ヨーロッパによる世界制覇の時代
第五章:二つの世界大戦で没落する西欧
第六章:地球化革命の時代

 人間が定住し共同生活を営むようになり”都市”が出来始めた約五千年前を、人類の歴史の始まりとすると、地球の始まりから比較すれば、わずか五千年の間に人類社会は目覚しい発展を遂げた。著者にして見れば、その五千年の世界史をわずか300ページ強で著すにはご苦労があったろう。
本書は見開き2ページ単位で、図を用いてその世界史を平易に解説してくれる。
 私にとっては、かつて義務教育で学んだ(つもりの)世界史は、教科書を舐めるだけのもので、個々のページの繋がりがほとんど頭に入らなかったと言える。しかも日本の地理さえ知らない子供が、ましてや世界のどこでどんな歴史が繰り広げられてきたかなんかを理解するのは非常に困難な作業であった(他の人はどうかは知らない)。
 読後、人類の歴史は戦争の歴史であることを改めて思い知らされた。古代のように世界の各地で限られた地域だけで生活できていた頃は紛争は少なかったはずであるが、人間の数が増え、居住する地域が拡大すると、衝突が増え、争いの規模も拡大した。その最たるものが第2次世界大戦であった。
 また、最も紛争の原因となるのは貧富の差であることを実感した。それは地域や国同士の差であったり、国内の人々の間の差であったり。近年は資本主義が世界を覆い、世界は否応なくグローバル化の波にさらされている。その陰で貧富の差は拡大しているのではないだろうか。
 昨年9月のアメリカで起きた同時多発テロがきっかけで、アメリカを中心とした勢力によるアフガンへの攻撃は、本書を手にするきっかけの一つでもあった。世界史を知ると現在、世界で起きていることが、過去の歴史と密接につながっていることを実感させられる。

 話はそれるが、つい最近、”世界が100人の村だったら”というメールが世界に広がって話題になっているというのをTVで目にした。そのメールはチェーンメールのような悪意のあるものではないようで、ある学者の論文が基になり、共感する人たちの手でいつの間にか世界に広がったというのだ。その”100人の村だったら”というのを授業に取り入れて、現在の世界状況を認識させようという日本のある学校が紹介されていた。授業後の生徒が皆、自分がいかに幸福に暮らしているかを実感した、という発言していたのが印象的であった。きっとメールを世界中に転送した人々も、その生徒たちと同じ見解から善意でメールを送ったのであろう。そう、メールなんぞを使えるのも世界でごく一部の幸せな人間だけである(確か、その100人中、パソコンを持っているのはたった1人だった)。
 ここ百年ほどで世界の人口は爆発的に増加した。貧富の差も広がった。地球環境破壊も広がった。冷戦が終わり、ヨーロッパでは緩やかな地域統合が進み、今年からは本格的に統合通貨ユーロの流通が始まった。しかし世界各地ではいまだ紛争が絶えない。和平に向かうと期待されたパレスチナ問題は、一転泥沼化している。また、昨年9月のアメリカで起きた同時多発テロにしても、ブッシュ大統領が言うように新たな形の戦争と言える。これまでの国と国との戦いとは異質の争いが今後増えそうな、いやな事件であった。
 世界人類は時間がかかっても、粘り強く対話を続け、少しづつでも争いを解決し、戦争のない世界にしていかなければならないのは、当たり前である。少しでも幸せに暮らしたいのなら。

更新日: 02/01/31