読書メモ  

・文春新書「サラブレッド・ビジネス 〜 ラムタラと日本競馬」(江面弘也・著 \680、文藝春秋社)


はじめに

  今年、2000年にラムタラ産駒の3歳馬がデビューするかどうかは定かではないが、来る21世紀、来年の4歳クラシック戦線を沸かすことだろう。ラムタラは言わずと知れた、鳴り物入りで1997年に輸入された種牡馬。既にその産駒は”まる外馬”(外国産)として日本でも走っているが、純粋に内国産として走り出すのは今年以降。関係者の期待は大きい。
 

内容:
  この本はラムタラの輸入がビッグスクープとして取り上げられたのをきっかけに取材を始めた筆者の手によるもの。前書きで筆者が書いているように、直接馬券検討には役立つものではない。競馬をビジネスという側面から描いたのものであるから、競馬ファンとしては興味の薄い内容かも知れない。私も競馬ファンの端くれとして、最初はつまらないかなと思いながらも、話の種にと本を手にした。
本書ではイギリス貴族が持ち馬を走らせ、競馬という遊びを始め、サラブレッドという馬を作り上げていく歴史と、競馬がビジネスとして世界へ広がっていき、辺境の地・日本でも成長していく様が描かれている。
 現在、競馬発祥の地・イギリスでは競馬ビジネスは衰退に向かい、最も強いサラブレッドを生み出していたその地位は、大英帝国が凋落の一途を辿るように傾いているようだ。イギリスに取って代わったのが、戦後超大国にのし上がったアメリカ。今では優秀は種牡馬や産駒を逆に欧州へ輸出するようになっている。
 また、忘れてはならないのが、アラブ首長国連邦(UAE)のひとつドバイ首長国の存在だ。原油輸出で急成長したこの国の一族は、持ち馬を日本競馬にもよく遠征させてお馴染みである。その競馬界への影響は大きく、単に金にものを言わせて強い馬を買い漁るだけの成り金ではなかった。生産・育成にも熱心で、世界各地に牧場や育成施設を持つ。ビジネスとしての競馬をドバイの観光産業にも結び付けようという狙いもあった。
 筆者が言うようにお金のあるところに名馬が集まる。大国アメリカや、ドバイの王族に替わって、馬を買うようになったのは日本であった。1985年9月のプラザ合意以後の円高で、日本の馬主がどんどん欧米の種牡馬や競走馬を買い漁り始める。日本国内の馬生産者保護のため、今なお輸入馬の出走は制限されているが、安い外国産馬は日本の牧場には脅威であった。その輸入馬にも負けない馬を作るために多くの種牡馬も輸入されるようになった。ラムタラもそんな馬の一頭だ。日本のバブル崩壊後はJRAの売り上げは下降線をたどっているが、馬のレベルは確実に高くなっている。「名馬の墓場」「競馬鎖国」とも言われ、低く見られていたのは過去のこと。どんどん世界へ輸出する競走馬輸出大国になる日も近いかも知れない。

おわりに:
  ラムタラもいいが、今年デビューならばラムタラ産駒と同期となるはずのナリタブライアン産駒の走りにも期待がかかる。種牡馬入り後、早くして死亡した彼の無念を晴らして欲しいもの。
 そしてJRAには、もっと面白いレースを期待したい。

更新日: 00/07/09