Aアメリカ大好き! | |
高級住宅街で友人の車は煙を吹いて動かない。火は噴かなかったが、誰が見ても、どこから見てもポンコツ車だから当然と言えば当然。でも、こんなところで、ガソリンスタンドもない、周りは高級そうな家ばかり。ワシントンDC郊外の静かな町である。セルを回してもエンジンはかからないし、そのうちにバッテリーも無くなった。困った友人は、近くの高級住宅のドアを叩き、電話を借りた。当時は携帯電話もまだ普及していない。美しいご婦人が出てきて、多少疑惑を抱いたような顔つきで、ワイアレスの電話を貸してくれた。チラッと見えた家の中は「豪邸」だ。当然、家の中には入れてくれない。東洋系の顔の怪しい2人、電話を貸してくれただけでラッキーと思わなくちゃ。レッカー車は1時間後に来る事になった。さて、1時間時間をつぶそうにも何もない。住宅だけだ。車の中は暑いし、日陰でしゃがんで待つ事にした。しばらくして、先ほどの美しいご婦人が、コークと氷、紙コップを持って現われた。差し入れだ、2人で飲むには多すぎるほどのボトル2本、ご婦人の美しかった事!これで、「家の中でお待ちなさい」とでも言ってくれれば、と思ったりしたが、そこまで期待するのはあつかましい。最近の日本だったら、こんなことしてくれるだろうか?田舎ならまだしも、高級住宅街では、まず期待できないだろう。 アメリカ大好き!正確に言うとアメリカ人大好き!と叫んだ。 レッカー車がやってきた。陽気な黒人青年。我々を見て笑ってた、多分哀れな感じだったんだろう。こちらに住む友人は、私がお礼を言ってコップを返そうと言ったが、「良いんだよ、安いし、さっきちゃんとお礼したから」とそのままレッカー車に乗り、黒人青年の鼻歌を聴きコークを飲みながら帰った。 |
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